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2023/02/08

大手拓次詩畫集「蛇の花嫁」 「白き芥子の花」・「みちはさざめけり」・「こゑをうれしみ」・「心を献ぐ」・「何を語るらむ」・「悲しみのうたげ」・「病める花」

 

[やぶちゃん注:底本その他は始動した一回目の私の冒頭注を参照されたい。特にソリッドに公開したのには意味はない。]

 

 白き芥子の花

 

わがおもひのいづみ

かのひとは しろき芥子(けし)の花のごとく

ひとすぢの みちのうへにうかべり

はてしなきゆふべの つながりきたる

ひとすぢの

いとほそき みちのうへに にほひつつあり

 

 

 

 みちはさざめけり

 

そは まことのみちらむ

われほとしく かげのなかに さまよへど

このゆくみちは

さびしく あをく さざめけり

 

 

 こゑをうれしみ

 

われは われは

ただ

うるはしきこゑを うれしみ

日日(ひび)をすごせり

 

 

 

 心 を 献 ぐ

 

われは わが心をささげむ

われは わがつきざる思ひもて

きみがかたへに 死にゆかむ

きみがかたへに 死にゆかむ

 

 

 

 何を語るらむ

 

うつくしきひとは

こよひ なにをば語るらむ

妹君とふたりして

また母上と

今宵は 何を語るらむ

 

 

 

 悲しみのうたげ

 

葡萄のふさの つぶらみの

こころ惹(ひ)けるも しぐれ月(づき)

つぶらなる實の みづみづと

かなしみの 宴(うたげ)の宵にふさはしし

 

 

 

 病 め る 花

    (一九二八・八夜、病める人を偲びてつくる)

 

ひともとの 病める花

おとづれもなけれど

この身にうつる 雨のまばたき

 

[やぶちゃん注:「一九二八」年は昭和三年で、創作時、拓次は満四十歳。この年、月日は不詳であるが、萩原朔太郎と室生犀星が拓次を下宿に訪ねている。

 なお、最後の詩篇の見開き(詩は右ページ)の左ページに、「淚とよろこびの眼」(「淚と」は後から吹き出しで右に添えてある)と右に手書きで記したデッサンがある。下方に手書きで「1920、5、30」とクレジットがある。]

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