大手拓次詩畫集「蛇の花嫁」 「心病む」・「汝が影」・「ゆふぐれの時(斷章四篇)」・「まよひゆかむとすれど」・「うつりくるにほひ」・「しのべる聲」・「わが靈(たましひ)はよみがへれ」 / 詩篇本文~了
[やぶちゃん注:底本その他は始動した一回目の私の冒頭注を参照されたい。特にソリッドに公開したのには意味はないが、これを以って詩篇本文は終わっている。
以下、まだ、「目次」・「あとがき」(編者の逸見享氏によるもの)・「挿絵目次」とあって、奥附となる。無論、総て電子化注する。逸見氏はパブリック・ドメインである。]
心 病 む
かなしみに さいなまれつつ
わがこころ 病めれば
ひかりなき 冬の日のごとく
あはれにも いたいたし
汝 が 影
わがこころ くもりなければ
汝(な)がかげの そよろにもうつるなり
木末葉(こぬれば)のさやぎのごとく
ゆふぐれの時 (斷章四篇)
ゆふべ せまれば
かなしみの蝶 わが胸にあり
🦋
うつろはぬ とこしへのもの
かへりきたりぬ
わがむねの あをきそこひに
🦋
このゆふぐれの
もののかげりに ひそみゆく
なげきのすがた
🦋
いとしきものよ
いとしきものよ
汝(なれ)をおもへば わがこころ
四月(うづき)のごとく さわやげり
[やぶちゃん注:「🦋」は前に使用したように、それとなく置いたもので、元は、白抜きで、もっとシンプルな図柄である。]
まよひゆかむとすれど
われ まよひゆかむとすれど
なほ きみが心のなかにあり
しろかねの ひびきをつたふ
きみが心のなかにあり
ああ このかなしみをもて
われ ひとの世のみちに ながらへむ
うつりくるにほひ
うつりくる にほひのあれば
眼にあらず
手にあらず
耳にしも あらざれど
かげろへる にほひの
わが心をば
いだきしづめけり
し の べ る 聲
しのべるもののこゑ
とほくに うなだれ
ゆきすぐる薔薇のごとくも
かげをみだせり
わが靈(たましひ)はよみがへれ
ゆきずりの 汝(なれ)をまもれば
そのうつくしさ なににたとへむ
ながためにこそ
ながためにこそ
わがたましひは よみがへれ
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