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2023/03/30

早川孝太郞「三州橫山話」 川に沿つた話 「飛んで登らぬ鯉」・「ハヤのこと」

 

[やぶちゃん注:本電子化注の底本は国立国会図書館デジタルコレクションの「国立国会図書館内/図書館・個人送信限定」で単行本原本である。但し、本文の加工データとして愛知県新城市出沢のサイト「笠網漁の鮎滝」内にある「早川孝太郎研究会」のデータを使用させて戴いた。ここに御礼申し上げる。今回はここ。]

 

 飛んで登らぬ鯉  鮎に限らず、ハヤでも、鯇《あめのうを》でも鱒でも何魚《なにうを》でも、夏は川上に登るので、其等が瀧にさしかゝると、一旦飛上つて、其餘勢で泳ぎ上りましたが、鯉のみは、決して飛ばないで、初めから泳いで登りました。眞つ蒼に水の垂下《すいか》した中を、潜航艇のやうに、すうつと見事に泳いで登りました。

[やぶちゃん注:「ハヤ」既注であるが、再掲しておくと、そもそも「ハヤ」という種は存在しない「大和本草卷之十三 魚之上 ※(「※」=「魚」+「夏」)(ハエ) (ハヤ)」を見られたいが、そこの私の注から転写すると、本邦で「ハヤ」と言った場合は、これは概ね、

コイ科ウグイ亜科ウグイ属ウグイ Pseudaspius hakonensis

ウグイ亜科アブラハヤ属アムールミノー亜種アブラハヤ Rhynchocypris logowskii steindachneri

アブラハヤ属チャイニーズミノー亜種タカハヤ Rhynchocypris oxycephalus jouyi

コイ科Oxygastrinae 亜科ハス属オイカワ Opsariichthys platypus

Oxygastrinae 亜科カワムツ属ヌマムツ Nipponocypris sieboldii

Oxygastrinae 亜科カワムツ属カワムツ Nipponocypris temminckii

の六種を指す総称であるから、その中の幼魚と断定してよいと私は考えている。

「鯇」これは、かなり、メンドクサい。この名自体は、琵琶湖固有種である条鰭綱サケ目サケ科サケ亜科タイヘイヨウサケ属サクラマス(ヤマメ)亜種ビワマス Oncorhynchus masou rhodurus の異名である(産卵期の特に大雨の日に群れを成して河川を遡上することに由来する「雨の魚」は異名としてかなり知られている)。当該種は、現在、栃木県中禅寺湖・神奈川県芦ノ湖・長野県木崎湖などに移殖されているが、当時、横山の寒狹川にいた可能性は、まずあり得ないから、ビワマスではない。とすれば、本種は何か? 私は思うに、

アマゴ(タイヘイヨウサケ属サクラマス亜種サツキマス Oncorhynchus masou ishikawae の河川残留型(陸封型)を指す異名。人によっては見た目がかなり異なることから、アマゴとサツキマスは別種と頑強に主張する人(西日本に多い)が有意にいるが、魚類学では同一種と決定されている)

を指しているいるのではないかと考える。如何にこの「鯇」「アメノウオ」が痙攣的にメンドクサいかは、私の「大和本草卷之十三 魚之上 鯇(ミゴイ/ニゴイ)」の本文及び私の痙攣的注を参照されたいが、ともかくも、この異名は驚くべき多数の種の異名として、中国や本邦で使用されているのである。但し、魚体の特徴が記されていないから、全く別の魚を横山では「鯇」と呼んでいた、或いは、呼んでいる可能性もあるから、当地の方の御教授を乞うものではある。

「鱒」これも一種と考えている方が多いが、前注のリンク先で注してあるが、「マス」という種はいない。「マス」とは、本邦の場合は、

条鰭綱原棘鰭上目サケ目サケ科 Salmonidae に属する魚類の内で和名・和名異名に「マス」が附く多くの魚

或いは、本邦で一般に、「サケ」(サケ/鮭/シロザケ:サケ科サケ属サケ Oncorhynchus keta)・ベニザケ(サケ亜科タイヘイヨウサケ属ベニザケ[本邦ではベニザケの陸封型の「ヒメマス」が択捉島・阿寒湖及びチミケップ湖《網走管内網走郡津別町字沼沢》)に自然分布する]Oncorhynchus nerka)・マスノスケ(=キング・サーモン:サケ亜科タイヘイヨウサケ属マスノスケ Oncorhynchus tschawytscha)など)と呼ばれる魚以外のサケ科の魚(但し、この場合、前者の定義とは「ヒメマス」「マスノスケ」などは矛盾することになる)を纏めた総称である。「マス」・「トラウト」ともにサケ類の陸封型の魚類及び降海する前の型の魚を指すことが多く、主に

イワナ(サケ科イワナ属 Salvelinus。現在、日本のイワナは二種であるという見解が一般的であるが、亜種を含め、分類は未だに決定されていない。詳しくは当該ウィキを参照されたい)

ヤマメ(サケ亜科タイヘイヨウサケ属サクラマス亜種ヤマメ(サクラマス)Oncorhynchus masou masou

アマゴ(タイヘイヨウサケ属サクラマス亜種サツキマス Oncorhynchus masou ishikawae

ニジマス(タイヘイヨウサケ属ニジマス Oncorhynchus mykiss

などが「マス」類と呼ばれるのである。これも同前で、現地の方からの御教授を得ないと、完全な特定は不可能である。

「鯉」コイ目コイ科コイ亜科コイ属コイ Cyprinus carpio 。まるで、東洋の川魚のチャンピオンのように誤解されているが、本種の元はヨーロッパ原産であって、凡そ本邦の象徴的淡水魚でも何でもない。

 

 ○ハヤのこと  山溪の水の尠《すく》ない流れには、ブトと呼んでゐるハヤの一種がいました。水が淀んで淵をなした所には、必ず一群のブトがゐて、其處には、赤ブトと云ふ頭や尾の赤くなつた大きなブトが雌雄居て、他のブトの群《むれ》は、それに隨つて行動してゐるやうで、餌が流れて行つてもこの赤ブトが動かない中《うち》は、小ブトはぢつとしてゐました。この赤ブトを捕つても、其處には、いつか又同じやうな赤ブトがゐるものでした。

[やぶちゃん注:早川氏は正しく前注で述べたように、「ハヤ」が複数の川魚を指すことの認識されていて、頼もしい。

「ブトと呼んでゐるハヤの一種」これは以下の婚姻色の叙述から、私は、「桜うぐい」の名をし負う、

コイ科ウグイ亜科ウグイ属ウグイ Tribolodon hakonensis の♂

を真っ先に想起した。釣ったことはないが、若い頃、富山県高岡の庄川べりの川魚料理店で食べた美しいそれが、川魚の最上の味だったことを忘れない。【二〇二三年四月一日改稿・追記】しかし、「早川孝太郎研究会」の、この次の本文(「蜘蛛に化けて來た淵の主」相当・PDF)に編者注があり、『カワムツ(ブト)』と題して魚体の写真も添えられ、『膨大な数の方言があるが、これらのすべてが石川県と愛知県を東限としている。とりもなおさず東日本には分布していなかった証だが、最近は稚アユの放流に混じって関東地方などへも移入され、定着している(この辺りでは「ハヨ」と言います。)』とあった。 カワムツの♂も強い赤い婚姻色を呈するので、ここは、

Oxygastrinae 亜科カワムツ属カワムツ Nipponocypris temminckii の♂

であることが判ったので、修正した。]

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