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2023/03/18

「曾呂利物語」正規表現版 五 ばけ物女になりて人を迷はす事

 

[やぶちゃん注:本書の書誌及び電子化注の凡例は初回の冒頭注を見られたい。

 底本は国立国会図書館デジタルコレクションの『近代日本文學大系』第十三巻 「怪異小説集 全」(昭和二(一九二七)年国民図書刊)の「曾呂利物語」を視認するが、他に非常に状態がよく、画像も大きい早稲田大学図書館「古典総合データベース」の江戸末期の正本の後刷本をも参考にした。但し、所持する一九八九年岩波文庫刊の高田衛編・校注の「江戸怪談集(中)」に抄録するものは、OCRで読み込み、本文の加工データとした。さらに、挿絵については、底本では抄録になってしまっているので、今までは、「国文学研究資料館」の「国書データベース」にある立教大学池袋図書館の「乱歩文庫デジタル」所収の画像(使用許可がなされてある)を最大でダウン・ロードし、補正(裏映りが激しいため)した上で、適切と思われる位置に挿入してきたが(本篇には挿絵があり、ここ(左丁)がそれである)、裏映りを消すために補正すると、薄くなるか、全体が黄色くなるかで、今一つ気に入らない。そこで、状態がかなりいい、上記岩波文庫版に挿絵の載るものは、それを画像で取り込み、トリミング補正することとした(今回はそれである)。

 

     五 ばけ物(もの)女(をんな)になりて人を迷はす事

 ある人、奉公の心ざし有りて、加賀國(かかのくに)へ罷りけるが、町屋に宿(やど)を借りてぞ、ゐたりける。

 かのあるじの息女、みめ美しく、形、優(いう)に侍るが、彼(かの)の者、物の隙(ひま)より見そめ、ひたすら思ひ沈みて、召し使ひける侍(さぶらひ)に、いひあはせて、色々、さまざま、心ざしの淺からぬ由(よし)、つたへければ、女も、いつしか、心、とけて、たがひに、むつまじくなりにけり。

 もとより、人目を忍ぶ事なれば、夜ふけ、人しづまりて後(のち)、かの男のもとへ通ひ侍りしが、ある夜(よ)、女、をとこのねやに有りながら、又、あるじのあたりにも、彼(か)の女の聲しけるを、なかだち、

『怪し。』

と思ひ、あるじのあたりヘ、何となく音(おと)づれて見れば、紛(まぎ)るゝ所も、なし。

 

Bakemonoonnaninaru

[やぶちゃん注:以上の岩波版では右上端のキャプションが見えないが、「国書データベース」で確認すると、「ばけ物女に成て人まよはす事」と確認出来る。]

 

 あまりの不審さに、なにがしの許(もと)へ行き、かたかげへ呼び寄せ、

「かかる事の侍る。」

由、ささやきければ、怪しみて、

『いかさま、我が心をたぶらかさんと、變化(へんげ)の物の態(わざ)にてぞ、あるらん。』

と思ひ、何となう、もてなすやうにして、とりて、引きよせ、一刀(ひとかたな)、させば、

「あつ。」

と云ふ聲のうちより、姿は、見えずなりにけり。

 さて、夜明けて、血をとめて、見れば、二里ばかり行きて、山、有り、山、又、山をわけ入りて見れば、大いなる岩あなの中(なか)に、かの女の姿をしてぞ、ゐたりける。

 日數(ひかず)すぎ行くまゝに、常の死人(しにん)の如くに、涸(か)れゆきぬ。

 主の娘も、恙(つゝが)なし。

 如何なる事とも、わきまへかねたる事どもなり。

[やぶちゃん注:本篇をほぼそのまま転用したものに、「諸國百物語卷之二 六 加賀の國にて土蜘女にばけたる事」ある。

「とめて」求めて。跡を追って。]

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