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2023/04/11

大手拓次 「繪すがた」

 

[やぶちゃん注:本電子化注は、初回の冒頭に示した通りで、岩波文庫の原子朗編「大手拓次詩集」(一九九一年刊)からチョイスし、概ね漢字を正字化して、正規表現に近づけて電子化注したものである。]

 

 繪すがた

 

白い寶玉の手に掘られた土のなかに

みどり色の光の笑ふ部屋がある。

つつましい女の情はうつうつとし、

やはらかに圍んだセロの塗壁は

春の宵のやうに歌をうたつてる。

 

緋綸子のなよなよしい

戀のきものが

肌の息にうかんでくる。

 

ああ、まどかなまどかな

愛の生ひたち。

 

[やぶちゃん注:創作年は初回を参照されたい。

「セロの塗壁」「セロ」は「春の宵のやうに歌をうたつてる」とあるところからは、楽器のチェロか。「チェロの塗壁」がよく説明は出来ないが、この詩全体が幻想の部屋であってみれば、チェロで作られた塗り壁という非現実的なシュールなイメージとして非合理な対象の接合・ぶつかり合いを耽美的に味わってでもいるのであろうか。考えて見れば、「戀のきもの」も同様と言えよう。

「緋綸子」「ひりんず」。緋色の綸子。「綸子」は既出既注。]

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