大手拓次 「劍を持つ愛」
[やぶちゃん注:本電子化注は、初回の冒頭に示した通りで、岩波文庫の原子朗編「大手拓次詩集」(一九九一年刊)からチョイスし、概ね漢字を正字化して、正規表現に近づけて電子化注したものである。]
劍を持つ愛
なだらかな小山をこえて
笛を鳴らす。
その笛の音(ね)に
あつまつてくる精靈の群(むれ)。
なだらかな小山をこえて
笛をならす。
一生笑つたことのない顏が
くらやみから見えを送る。
なだらかな小山をこえて
笛をならす。
小さくちぢかんだ祕密の足、
のびよ、のびよと歌ひながら。
[やぶちゃん注:標題の「劍」の読みは「つるぎ」か「けん」か、不明。前者で読みたい気はする。]