大手拓次 「水仙のひほひ」
[やぶちゃん注:本電子化注は、初回の冒頭に示した通りで、岩波文庫の原子朗編「大手拓次詩集」(一九九一年刊)からチョイスし、概ね漢字を正字化して、正規表現に近づけて電子化注したものである。]
水仙のにほひ
古い香爐の底にたまつてゐる
いろいろの人の、手づからにくゆらした香のくづれの
しんねりと死にさそふ、やはらかいおそろしいそのにほひ…………
めらめらと眼の前に
形をまねる黃水仙のかどはかし。
蛇遣(へびつか)ひの女の
ながい火のやうな舌にも心安らかに眠るやうな…………
水仙のにほひは遊んでる。

