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2023/04/16

佐々木喜善「聽耳草紙」 四一番 惡い寡婦

 

[やぶちゃん注:底本・凡例その他は初回を参照されたい。今回は底本では、ここから。標題の「寡婦」は本文に従い、「やもめ」と訓じておく。]

 

      四一番 惡い寡婦

 

 或所に、カバネヤミ(怠け者)の若者があつた。每日々々ぶらぶらして爲事(ナスコト)も爲事(スルコト)もなく暮して居た。ある寡婦(ヤモメ)がそれを寄せつけて、道を步く時は何でもいゝから目についた物を拾つて來るもんだと、惡智慧を授けた。言ひつけられた若者は、往來から布切れや木屑などを拾つて來て、寡婦の生計(クラシ)の手助けをして居た。

 或る夜、若者が若い女の屍《しかばね》を拾つて來たら寡婦は、これはよい物を拾つて來たと言つて、死人《しびと》の髮を梳(トカ)してやつたり、白粉朱(オシロイベニ)をつけて化粧をさせ、小洒張(コサツパリ)と身仕度をさせてからそれを若者に擔《かつ》がせて、自分も樽を持つて一緖に酒屋へ行つた。そしていゝアンバイに死人を戶に凭《もた》せかけて置いて、申し申し酒(サケ)クんつアえと言い棄てゝ二人は家へ逃げ歸つた。

 酒屋の番頭は、お客かと思つて戶を開けると、その拍子に樽を持つた若い女が倒れて死んだ。あれアこれアことな事をしたと言つて居るところへ、先刻の二人がまたやつて來て、あれア大變だ、此方《こつち》ではおら家(エ)の嫁を殺したでアと言つて難題を吹つかけた。何を言ふにも自分の家の前で倒れて死んだので酒屋は理に詰まつて、金を百兩出してあやまつた。寡婦と若者とは其の金で喜び繁昌した。

  (大正七年の頃、遠野町、佐々木緣子氏の手紙の
  中の五。但し此話は舊仙臺領氣仙郡地方に行はれ
  たものである。南部領仙臺領とは昔話まで人情が
  違つてゐる。この事はかなり面白い問題であると
  思つてゐる。)
  (此話のカバネヤミすなわち怠け者のことなども、
  南部ならばカラナキと言ふ筈である。報告者の母
  堂は舊仙臺領の氣仙郡の生れであつた。)

[やぶちゃん注:「舊仙臺領氣仙郡地方」旧仙台郡は現在の宮城県気仙沼市(グーグル・マップ・データ)よりも遙かに広域であったと思われる。ウィキの「気仙郡」を見られたい。

「南部領仙臺領」南部(盛岡)藩は現在の岩手県中部を地盤に青森県東部から秋田県北東部にかけての極めて広い地域を治め、仙台領石巻湊(現在の宮城県石巻市)を拠点として、米穀倉や海運を行っていた。南部盛岡藩の領有地域はウィキの「盛岡藩」にある、この外部リンク地図がよい。]

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