大手拓次 「銀色のかぶりもの」
[やぶちゃん注:本電子化注は、初回の冒頭に示した通りで、岩波文庫の原子朗編「大手拓次詩集」(一九九一年刊)からチョイスし、概ね漢字を正字化して、正規表現に近づけて電子化注したものである。
以下は、底本の編年体パートの『『藍色の蟇』時代Ⅰ(大正前期)』に載るもので、同パートについては、先のこちらの冒頭注を見られたい。]
銀色のかぶりもの
空はこつくりとはれてゐる。
ものものしいものは、みんな光線のうちにかくれ、
とほくとほく、ともがらをよぶ靈氣のこゑ、
わたしのよろこびとくるしみとは、
これも、れいろうとした靈氣のほとぼりをうけて、
アミーバのやうにのびてひろがる。
さても、ふしぎなのは、
この感じにわたしのからだがひろがるとき、
まばゆい、銀いろのものが、
かろく、わたしのあたまのうへにのつかつた。
これはおそらく神の榮光であらう。
空をとぶ鳥よ、地をはふ蟲よ、
それはみんなわたしの化身である。
[やぶちゃん注:「アミーバ」。アメーバ。綴りは「amoeba」「ameba」「amœba」と複数ある。当該ウィキによれば、『単細胞で基本的に鞭毛や繊毛を持たず、仮足で運動する原生生物の総称である。また仮足を持つ生物一般や細胞を指して』、『この言葉を使う場合もある。ギリシャ語で「変化」を意味する』(ラテン文字転写)『(amoibē) に由来する』とある。嘗つては、原生動物葉状根足綱アメーバ目Mastigamoebidaに一括されていたが、現在は分類が再編され、分類は未だ進行中である(同前リンク先の「分類」を参照されたい)。肉質類の原生動物の総称。単細胞で、大きさは〇・〇二(二十μ(ミクロン))~〇・五ミリメートル。増殖は分裂による。外殻を持たず、絶えず形を変化させる。仮足と呼ばれる原形質の突起を伸ばして運動・捕食する。淡水・海水・土壌中に広く棲息し、寄生性で病原性を持つ種もあるのは御存じの通り。]