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2023/04/30

「教訓百物語」始動 / 上卷(その1 百物語或いは『「化け物」とは何か』)

「教訓百物語」始動 / 上卷(その1 百物語或いは『「化け物」とは何か』)

[やぶちゃん注:「教訓百物語」は文化一二(一八一五)年三月に大坂で板行された。作者は村井由淸。所持する国書刊行会『江戸文庫』の「続百物語怪談集成」の校訂者太刀川清氏の「解題」によれば、『心学者のひとりと思われるが伝記は不明である』とある。

 底本は「広島大学図書館」公式サイト内の「教科書コレクション画像データベース」のこちらにある初版版本の画像をダウン・ロードして視認した。なお、表紙題箋は左上端が折れているため、字が判らないので省略した(同じく前掲「解題」には『題箋には「「教訓絵入百物語」』とあるのだが、「教」が確かに「敎」でないのか、「絵」は「繪」でよいのかが、判らないからである)。但し、上記の「続百物語怪談集成」(一九九三年刊)の本文をOCRで読み込み、加工データとした。

 本篇は、書名からして「敎」ではなく、現在と同じ「教」の字を用いているように、表記が略字形である箇所が、ままある。その辺りは注意して電子化するが、崩しで判断に迷った場合は、正字で示した。また、かなりの漢字に読みが添えてあるが、そこは、難読或いは読みが振れると判断したもののみに読みを添えた。

 また、本書はこの手の怪談集では、例外的で、上・下の巻以外(但し、それは、「続百物語怪談集成」でのことであって、実は底本では、その分かれ目さえもなく、ベタで繋がっているのである!!)には章立て・パート形式を採用しておらず、序もなく、本文は直にベタで続いているため(但し、冒頭には「百物語」の説明があって、それとなく序文っぽくはあり、また、教訓の和歌が、一種のブレイクとなって組み込まれてある)、私の判断で適切と思われる箇所で分割して示すこととし、オリジナルなそれらしい標題を番号の後に添えておいた

 さらに、挿絵が八枚(二幅セットで四種)あるが、底本は画像使用には許可が必要なので、やや全体に薄い箇所があるものの、視認には耐えるので、「続百物語怪談集成」のもの(太刀川氏蔵本底本)を読み込んで、トリミング補正して適切と思われる箇所に挿入した。因みに、平面的に撮影されたパブリック・ドメインの画像には著作権は発生しないというのが、文化庁の公式見解である。いや、というより、底本の画像の状態が非常によいので、そちらを見られんことを強くお勧めするものではある。

 読み易さを考え、段落を成形し、句読点も「続百物語怪談集成」を参考にしつつも、追加・変更をし、記号も使用した。踊り字「〱」「〲」は生理的に嫌いなので正字化或いは「々」等に代えた。ママ注記(仮名遣の誤りが多い)は五月蠅いので、下附にした。

 なお、このブログ・カテゴリ「続・怪奇談集」なのであるが、一千件を越えたカテゴリ「怪奇談集」とリスト内で離れてしまっていて、私自身、何かと探すのに苦労するという、大いなるド阿呆状態に陥っているため、「怪奇談集Ⅱ」と変えることとする。

 

教訓百物語

 むかしから、『「百物がたり」すると、化物が出(で)る。』といふ事を云傳(いゝつた)へますが、是れは、はなはだ難有(ありがた)ひ[やぶちゃん注:ママ。]教(をしへ)なれど、是を実(まこと)にしる人が、なひ[やぶちゃん注:ママ。]。其(その)「百物がたり」の仕(し)やうはと、いへば、先(まづ)、大(をゝ[やぶちゃん注:ママ。])かはらけに、油を、一ぱい、さして、とうしんを、百すじ、入(いれ)、燈(とも)し置(をき[やぶちゃん注:ママ。])、さて、それから、こわひ[やぶちゃん注:ママ。]噺(はな)しを、一ッにしては、一筋、けし、又、一ッしては、一筋、けし、段々、次第に、けして、眞(ま)くらがりになると、それから、「化ものが、出る。」といふ。

 是れ、則ち、人の心の譬(たとへ)をいふたものじや。

 

Hyakumonogatari1

 

 先づ、天地(てんち)の變化(へんくわ)といふて、一切、万物(ばんぶつ)、みな、ばけざるものは、ない。

 先づ、春、夏、秋、冬と、ばける。四季の變化(うつりかは)るに、したがふて、草木さうもく)、花咲き、実のり、また、葉が落つる、盛へる、是れ、皆、ことごとく、化ものじやが、其中に、人は「萬物の長(ちやう)」といふて、身も心も、ともに、ばけものゝ根元じや。

 先づ、生れた時は、赤子(あかご)にて、身も心も、かわひ[やぶちゃん注:ママ。]らしいものじや。「やゝさん」と、いふ。

 扨(さて)、しばらくの間(ま)に、はや、步行(あるく)やうになると、色々の、わやくをすれば、人も「やゝさん」とはいはん、早(はや)、「ぼんさん」・「いとさん」と名が替るじや。[やぶちゃん注:「わやく」「枉惑(わうわく(おうわく):道義に反する言動によって人を惑わすこと)」の変化した語で、ここでは「悪ふざけ・悪戯(いたずら)」の意。]

 又、七ッにもなれば、はや、「七里(なゝさと)𢙣(にく)む」といふて、「由松(よしまつ)さん」の、「おぎんさん」のと、ばける。[やぶちゃん注:「七里(なゝさと)𢙣」(「惡」の異体字)「(にく)む」諺の「七(なな)つ七里(ななさと)憎まれる」がもとで、「数え七歳頃の男の子は悪戯盛りで、近くの村々の憎まれっ子になるということを言う成句。「七里」は数ではなく「多くの村々」の意。]

 それから、「息子殿」・「娘御(むすめご)」と、ばける間(ま)もなふ、「嫁どの」「聟樣」のと、化ける。

 又、間(ま)ものふ、「ぼん」が、「とゝ」と、いはれ、「嫁御」が、又、ばけて、「御内儀さん」の、「御家(をいへ[やぶちゃん注:ママ。])さん」の、「おかみさま」の、と、段々、ばけるじや。

 又、ばけよ[やぶちゃん注:ママ。「化け樣(やう)」の意。]が惡いと、「山の神」と、ばけるじや。

 こわひものナ。

 夫(それ)から、段々、白髮(しらが)が、はへ[やぶちゃん注:ママ。]て、しは[やぶちゃん注:「皺」。]がよる、齒がぬける。是れ、皆、自身、好んで、ばけるにも、あらず、しはをよせたり、白髮をこしらへ、目をかすめ、耳をば、遠(とふ)ふ[やぶちゃん注:ママ。聴力が減衰することを言う。]したり、歯を、ぬき、腰をかゞめ、とうどう[やぶちゃん注:「到頭(たうとう)」の誤記であろう。後半は底本では踊り字「〲」である。]、「祖父(ぢぢ)」・「祖母(ばば)」と、ばかさるゝ、此(この)ばかす次者(もの)を、しらず。[やぶちゃん注:「続百物語怪談集成」では、この最の箇所を「此ばかす者(もの)をしらず」と起こしているのだが、どうも、それだと、意味が通らないと私は思った。暫く底本の文字と睨めっこした。確かに「須」の字を崩したひらがな「す」には見える。しかし、これはまた、「次」の崩し字にも酷似すると感じた。「ぢぢ」「ばば」になったら、曾祖父母やその先代は、十把一絡げで「ぢぢ」「ばば」のまんまであるから、その「次」に化け物になって化かす「者」の存在を「知」らない、則ち、「次者」を「つぎのもの」と読んでみたのである。大方の御叱正を俟つものではある。

 〽あさおきて夕(ゆふ)べに顏はかはらねどいつの間にやら年は寄りけり

 〽はかなしや今朝(けさ)見し人の面影の立(たつ)はけむりの夕ぐれの空

 

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