大手拓次 「血をくむ柄杓」
[やぶちゃん注:本電子化注は、初回の冒頭に示した通りで、岩波文庫の原子朗編「大手拓次詩集」(一九九一年刊)からチョイスし、概ね漢字を正字化して、正規表現に近づけて電子化注したものである。
以下は、底本の編年体パートの『『藍色の蟇』時代Ⅰ(大正前期)』に載るもので、同パートについては、先のこちらの冒頭注を見られたい。
太字は底本では傍点「﹅」。]
血をくむ柄杓
おまへは柄杓をもつてわたしの胸から血をくみとる、
おまへのきたないかさぶたの手は
死んだけものの腰骨でこしらへたひしやくの柄をとつて、
小鬼(こおに)のやうに空のなかにをどつてゐる。
腹のへつた蛇のむれは
あちらにもこちらにも環(わ)をゑがいてあつまる。