大手拓次訳 「見事な菊」 ライナー・マリア・リルケ
[やぶちゃん注:本電子化注は、初回の冒頭に示した通りで、岩波文庫の原子朗編「大手拓次詩集」(一九九一年刊)からチョイスし、概ね漢字を正字化して、正規表現に近づけて電子化注したものである。
以下は、底本の最終パートである『訳詩』に載るもので、原氏の「解説」によれば、明治四三(一九一〇)年から昭和二(一九二七)年に至る約百『篇近い訳詩から選んだ』とあり、これは拓次数えで二十三歳から四十歳の折りの訳になる詩篇である。
ここでは、今までとは異なり、一部で、チョイスの条件が、かなり、複雑にして微妙な条件を持ち、具体には、既に電子化注した死後の刊行の『大手拓次譯詩集「異國の香」』に載っていても、別原稿を元にしたと考えられる別稿であるもの、同一原稿の可能性が高いものの表記方法の一部に有意な異同があるものに就いては、参考再掲として示す予定であるからである。それについての詳細は、初回の私の冒頭注の太字部分を見られたい。]
見事な菊 ライナー・マリア・リルケ
あの日に、菊はどんなにうつくしかつたか。
わたしは、もう、その輝くばかりの白さにふるへた………
それから、お前はわたしの心を奪(うば)はうとして來た
眞夜なかに………
わたしは恐れを持つてゐた、そしてお前は、あやふくつつしみ深く來た、
丁度、ある夢がわたしの前にお前をぱつとあらはした時、
お前は來たのだ――フエアリーの脣からでる歌のやうに
夜のなかに鳴り出でた………。
[やぶちゃん注:作者は、無論、知られたオーストリアの詩人ライナー・マリア・リルケ(Rainer Maria Rilke 一八七五年~一九二六年)である。]
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