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2023/05/27

畔田翠山「水族志」 クチビダヒ (フエフキダイ・ハマフエフキ)

 

(二六)

クチビダヒ 龍尖

續修臺灣府志曰龍尖口尖而身豐味甘而脆美出澎多湖多多曬作乾按ニ

龍尖ハ「クチビダヒ」也日用襍字母ニ龍鮎「クチビダヒ」ト云「クチビ」ハ口

中赤色ニ乄火ノ如キヲ云大和本草曰「クチビダヒ」口尖色淡黑味與タ

ヒ相似較少按「クチビ」ハ形狀棘鬣ニ似テ嘴細長ニ乄尖リ口中赤背淡

紫褐色ニ乄如鱗褐斑アリ斑白色靑ヲ帶淡褐色ノ斑鱗ノ本ゴトニア

リ頰鱗ナリ淡褐色上唇上薄ク出扁ニ乄尖レリ下唇ノ下白唇淡紅色

ヲ帶背淡鬣褐色ニ乄刺ニ紅色アリ脇翅淡紅褐色腹下翅刺淡白ニ

乄翅ノ本淡黃末微紅色腰下鬣本淡褐色末黃色尾岐アリテ本黃褐色

末淡褐色㋑ロク井【紀州若山田邊】一名メイチ【熊野新宮】タルミ【勢州慥柄】タバメ【泉州堺】コロダヒ【防州岩國】クチビダヒノ五六寸ノ者也形狀「クチビ」ニ同乄小也全身

縱條アリテ條淡紅色或ハ條淡黃色腹靑白色背ヨリ淡黑色ノ斑八

九條ノ淡紅ノ條ヲ除テ腹上ニ至ル頭黃斑色ノ背鬣淡紅色ニ乄淡黑

斑アリ尾紅色ニ乄深赤色ノ斑橫ニアルト淡紅黃色ニ乄黑斑橫ニア

ルトアリ脇翅斑紅或ハ黃ヲ帶腹下ノ翅黃色或ハ黑斑アリ腰下鬣淡

黃色ニ乄赤斑アルト黑斑アルトアリ

○やぶちゃんの書き下し文

[やぶちゃん注:冒頭の引用には衍字と思われるものがある。中文サイトのこちらと校合し、以下の訓読文では、そこに『龍尖(口尖而身豐,味甘而脆美。出澎湖,多曬作乾)』とあるのに従った。]

くちびだひ 「龍尖」

「續修臺灣府志」に曰はく、『龍尖(りうせん)、口、尖(とが)りて、身、豐か。味、甘くして脆く、美(よ)し。澎湖(ほうこ)に多く出づ。多く曬(さら)して、乾(ひもの)に作る。』と。按ずるに、龍尖は「くちびだひ」なり。「日用襍字母」に「龍鮎(りゆうねん)」は「くちびだひ」と云ひ、「くちび」は、口の中、赤色にして火のごときを云ふ。」と。「大和本草」に曰はく、『「クチビダヒ」 口、尖り、色、淡黑。味、「たひ」と相ひ似て、較(やや)、少(をと)る。』と。按ずるに、「クチビ」は、形狀、棘鬣(たひ)に似て、嘴(はし)、細長にして、尖り、口中、赤く、背、淡紫褐色にして、鱗のごとく、褐(かついろ)の斑(まだら)あり。斑は白色に靑を帶べる淡褐色の斑、鱗の本(もと)ごとにあり。頰(ほほ)、鱗(うろこ)なり。淡褐色。上唇(うはくちびる)の上、薄く出(い)で、扁(たひら)にして、尖れり。下唇の下、白く、唇、淡紅色を帶ぶ。背、淡く、鬣(ひれ)、褐色にして、刺(とげ)に紅色あり。脇翅(わきびれ)、淡紅褐色。腹下翅(はらしたびれ)の刺、淡白にして翅(ひれ)の本(もと)は淡黃、末は微紅色。腰下鬣(こししたびれ)、本は淡褐色、末は黃色、尾、岐(また)ありて、本は黃褐色、末は淡褐色。

㋑「ろくゐ」【紀州、若山・田邊。】 一名、「めいち」【熊野、新宮。】・「たるみ」【勢州、慥柄(たしから)。】・「たばめ」【泉州、堺。】・「ころだひ」【防州、岩國。】。「くちびだひ」の、五、六寸の者なり。形狀、「くちび」に同(おな)じくして、小なり。全身、縱條ありて、條、淡紅色、或いは、條、淡黃色。腹、靑白色。背より淡黑色の斑(まだら)、八、九條の淡紅の條を除(よ)けて腹の上に至る。頭、黃斑色。背鬣(せびれ)、淡紅色にして、淡黑の斑ある。尾、紅色にして深赤色の斑の、橫にあると、淡紅黃色にして黑き斑(まだら)の橫にあると、あり。脇翅(わきびれ)の斑、紅或いは黃を帶ぶ。腹下の翅(ひれ)、黃色、或いは、黑斑あり。腰下鬣(こししたびれ)、淡黃色にして、赤斑あると、黑斑あると、あり。

[やぶちゃん注:今回の底本はここ「大和本草」の引用は、「大和本草諸品圖下 クチミ鯛・ナキリ・オフセ・クサビ (フエフキダイ・ギンポ・オオセ・キュウセン)」の最初に出る「クチミ鯛」である(一部、表記が異なるが、問題はない)。そこで私はその「クチミ鯛」について、「大和本草附錄巻之二 魚類 クチミ鯛 (フエフキダイ)」で考証した通り、スズキ目スズキ亜目フエフキダイ科フエフキダイ亜科フエフキダイ属フエフキダイ Lethrinus haematopterus でよい、としてある。国立国会図書館デジタルコレクションの宇井縫蔵「紀州魚譜」(三版・昭和七(一九三二)年刊)の「フエフキダイ」の項でも、「クチビ」「クチビダイ」を『紀州各地』の方言として冒頭に掲げている。但し、次のページに載る「ハマフエフキ」フエフキダイ属ハマフエフキ Lethrinus erythracanthus (縫蔵氏の種小名はシノニムを調べたが、見当たらない。不審)の項で『體形色等フエフキダイに酷似する』とされ、「方言」の欄には『フエフキダイと混同してゐる』とあるので、同種もここに入れておくべきであろう。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のフエフキダイと、ハマフエフキのページもリンクさせておく。自然界では、確かに、これ、一緒くたにしそうだな。

「龍尖」「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のフエフキダイ属アマクチビ Lethrinus erythracanthus のページを見ると、「外国名」の項にズバリ、「龍尖」とあり、しかも、その採取地を『台湾(澎湖)』(ここ:グーグル・マップ・データ。以下、同じ)とするので、フエフキダイの近縁種であるが、遙かに派手なことが判る。

「慥柄」現在の三重県度会(わたらい)郡南伊勢町(みなみいせちょう)慥柄浦(たしからうら)。]

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