「新說百物語」巻之三 「縄簾といふ化物の事」
[やぶちゃん注:書誌・凡例その他は初回の冒頭注を参照されたい。
底本は「国文学研究資料館」のこちらの画像データを用いる。但し、所持する国書刊行会『江戸文庫』の「続百物語怪談集成」(一九九三年刊)に載る同作(基礎底本は国立国会図書館本とあるが、国立国会図書館デジタルコレクションで検索しても、かかってこないので、公開されていない)にある同書パートをOCRで読み込み、加工データとして使用させて戴いた。ここに御礼申し上げる。
今回はここ。本篇には挿絵はない。この篇も濁音脱落が多い。ママ注記が五月蠅いが、悪しからず。標題は「なはれん」と読んでおく。]
縄簾といふ化物の事
京城《けいじやう》の物に、ふしき[やぶちゃん注:ママ。]なる事、むかしより、あり。
雨など、そほふる[やぶちゃん注:ママ。]夜、其所を通れは[やぶちゃん注:ママ。]、なにやらん、㒵《かほ》へ悬《かか》るものあり。[やぶちゃん注:「悬」は「懸」の異体字。]
なわ[やぶちゃん注:ママ。]のうれんのごとくなり。とかく㒵へかゝりて、むかふへ、行《ゆき》かたし[やぶちゃん注:ママ。]。
無理に過行《すぎゆけ》れは[やぶちゃん注:ママ。]、又、うしろより、からかさの、ろくろを持《もち》て、ひきとめ、うこかせす[やぶちゃん注:総てママ。]。とやかくして、行《ゆき》れは[やぶちゃん注:ママ。]、あとは、なにの、さはりも、なし。
むかしより、今にいたりて、たへす[やぶちゃん注:ママ。]、幾人も、あひたる人の、噂にて侍る。
[やぶちゃん注:古くから今にある京都の都市伝説である。ちょっと痛いのは、最後で、作者自身は、この年になるまで、その「縄簾の怪」に逢ったことがない点である。なお、妖怪サイトのこちらに、本話を紹介し、さらに類話も添えてある。
「京城」京の都。
「のうれん」「暖簾(のれん)」に同じ。「暖」は唐音で「ノン」「ノウ」で、その「のんれん」「のうれん」が変化して「のれん」となったもの。]
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