「新說百物語」巻之四 「長命の女の事」
[やぶちゃん注:書誌・凡例その他は初回の冒頭注を参照されたい。
底本は「国文学研究資料館」のこちらの画像データを用いる。但し、所持する国書刊行会『江戸文庫』の「続百物語怪談集成」(一九九三年刊)に載る同作(基礎底本は国立国会図書館本とあるが、国立国会図書館デジタルコレクションで検索しても、かかってこないので、公開されていない)にある同書パートをOCRで読み込み、加工データとして使用させて戴いた。ここに御礼申し上げる。
今回はここ。挿絵はない。この篇も濁音脱落が多い。ママ注記が五月蠅いが、悪しからず。]
長命の女の事
京都四条に檜皮《ひはだ》やあり。
近江のものにて、京へ、奉公に出、年季、首尾よく、相《あひ》つとめ、宿這入(やとはいり[やぶちゃん注:総てママ。])しける。
[やぶちゃん注:「宿這入」「やどはいり・やどばいり」で、奉公人が暖簾を分けて貰い、独立することを言う。]
其親は、近江にありけるか[やぶちゃん注:ママ。]、六十歲の時に、五十歲になる女房を、むかへ、女房五十四歲にて、初產をいたし、此檜皮屋を產み、夫《それ》より、段々と、十人の子を、もふけ[やぶちゃん注:ママ。「まうける」が正しい。]ける。
寶曆十二の年[やぶちゃん注:一七六二年。徳川家治の治世。]、此惣領の檜皮や、八十四歲なり。
父は、相はて、母は、百三拾七歲にて、存命なるが、六十歲ばかりに見えけるよし。
[やぶちゃん注:年齢は、ちょっと信じ難い。]
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