佐藤春夫譯「支那厯朝名媛詩鈔 車塵集」正規表現版 「ほほ笑みてひとり口すさめる」呂楚卿
[やぶちゃん注:書誌・底本・凡例等は初回を見られたい。本篇はここ。]
ほほ笑みてひとり口すさめる
覽 鏡 獨 無 語
凝 眸 意 似 痴
遙 遙 無 住 着
若 箇 是 相 思
呂 楚 卿
鏡とりでてうつとりと
うつけ心のまなざしや
見入るもとほきうはのそら
戀ぞうれしきかくもこそ
※
呂楚卿 明朝の妓女。 萬曆の頃であらうか。 未詳。
※
[やぶちゃん注:「呂楚卿」「りよそけい」と読んでおく。
「萬曆」明の第十四代皇帝神宗の在位中に使われた。一五七三年から一六二〇年まで。
*
ネットではこの詩は見当たらない。従って、題名も判らない。推定訓読しておく。
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鏡を覽(み)て 獨り語る無し
眸(ひとみ)を凝(こ)らし 意(おも)ひは痴(ち)に似たり
遙遙(えうえう)として 住み着くこと無し
若箇(いかばか)りか 是れ 相ひ思はんに
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