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2023/06/28

「新說百物語」巻之五 「ざつくわといふ化物の事」 / 「新說百物語」全電子化注~完遂 附・目録

[やぶちゃん注:書誌・凡例その他は初回の冒頭注を参照されたい。

 底本は「国文学研究資料館」のこちらの画像データを用いる。但し、所持する国書刊行会『江戸文庫』の「続百物語怪談集成」(一九九三年刊)に載る同作(基礎底本は国立国会図書館本とあるが、国立国会図書館デジタルコレクションで検索しても、かかってこないので、公開されていない)にある同書パートをOCRで読み込み、加工データとして使用させて戴いた。ここに御礼申し上げる。

 今回はここから。この篇も濁音脱落が多い。ママ注記が五月蠅いが、悪しからず。

 なお、これを以って「新說百物語」は終わっている。]

 

   ざつくわといふ化物の事

 讃刕のかたほとりに、妙雲寺といふ寺あり。

[やぶちゃん注:「妙雲寺」不詳。少なくとも、現在の香川県にはない。]

 其寺に、むかしより、

「『さつくわ』といふ化物、あり。」

と、はかり[やぶちゃん注:ママ。]、いゝ[やぶちゃん注:ママ。]傳ヘ、誰《たれ》見たるといふものも、なかりける。

 その時の住持を、良賢とかや、いへりける。

 其弟子に、良敬といふ若僧ありけるか[やぶちゃん注:ママ。]、博學にして、美僧なりける。

 あるとき、良敬、学文《がくぶん》のいとまに、門前にいて[やぶちゃん注:ママ。]ゝ、夕暮、凉み居《を》られける。

 蛍の、ふたつ三つ、飛ふ[やぶちゃん注:ママ。]にさそはれて、思はす[やぶちゃん注:ママ。]、壱、弐町[やぶちゃん注:百九~二百十八メートル。]もあるきける所へ、あとより、又々、しつかに[やぶちゃん注:ママ。]あゆみ來《きた》るものあり。

 ふりかへりて見れは[やぶちゃん注:ママ。]、やせたる女《をんな》の、色しろなるか[やぶちゃん注:ママ。]、髮、打《うち》みたし[やぶちゃん注:ママ。]てあとより來る。

 さしも丈夫なる良敬も、

「そつ[やぶちゃん注:ママ。「ぞつ」。「慄(ぞつ)」。]

として、立ち歸らんとしたりけるか[やぶちゃん注:ママ。]、彼《か》の女、

「につ」

と笑ひて、

「是れまて[やぶちゃん注:ママ。]來たりたまへは[やぶちゃん注:ママ。]、今すこしにて、我《わが》すむかたなり。御出《おいで》なさるへし[やぶちゃん注:ママ。]。」

と、手をとりて、行かんとす。

 良敬は、

『ゆかし。』

と思ひて、彼れ是れする内に、日も、とくと、くれて、物のいろめも見へぬやうに成《なり》たり。

 女のいはく、

「この年月の、我思ひ、今宵、はらさて[やぶちゃん注:ママ。]、をくへきか[やぶちゃん注:総てママ。]。」

と、引き立てゆくとおもへは[やぶちゃん注:ママ。]、良敬、夢のことく[やぶちゃん注:ママ。]になり、其後《そののち》は、ものを覚へす[やぶちゃん注:ママ。]なりたり。

 其夜、良敬、見ヘさりけれは[やぶちゃん注:総てママ。]、良賢、おとろき[やぶちゃん注:ママ。]

「あちよ、」

「こちよ、」

と、尋ぬれとも[やぶちゃん注:ママ。]、行きかた、なし。其あけのあさ、四、五町[やぶちゃん注:約四百三十七~五百四十五半メートル。]わきの山際に、たはひもなく、打《うち》ふしたり。

 よりて見れは[やぶちゃん注:ママ。]、衣の惣身に、しろき針のことき[やぶちゃん注:ママ。]毛、所々に、付きたり。

 夫より、寺へつれ歸り、介抱して、息才《そくさい》には、なりたれとも[やぶちゃん注:ママ。]、折々は、狂気のことく[やぶちゃん注:ママ。]、其女の事のみ、口はしり[やぶちゃん注:ママ。]ける。

 良賢、

『口おしき[やぶちゃん注:ママ。]事。』

に、おもひ、別して、祕藏の弟子なれば、我が居間に、壇(たん[やぶちゃん注:ママ。])を、かざり、一七日《ひとなぬか》があいだ[やぶちゃん注:ママ。]、護摩を修《しゆ》せられける。

 七日めの夜《よ》、何かはしらす[やぶちゃん注:ママ。]、壇上に落《おち》かゝりたり。

 良賢は、取つて、おさへ、脇さしを以て、さし通す。

 はねかへさんとする所を、指通《さしとほ》し、指通し、終《つひ》に、化物を、しとめたり。

 其形をみれは[やぶちゃん注:ママ。]、おゝきさ[やぶちゃん注:ママ。]は、犬程にて、毛色、しろく、口は、耳きはまて[やぶちゃん注:ママ。]、きれて、背筋に、くろき毛、あり。

 何といふけものといふ事を、知らず。

「かの寺の『ざつくわ』といふ化物は、是れならん。」

と、皆人、申《まふし》ける。良賢の名、それより、高く、智行兼備(ちかうけんび)を、うやまひける。

[やぶちゃん注:良敬が妖女に誘われた際に思わず、「『ゆかし。』と思」った時が、変化(へんげ)の妖獣の術に完全に捉われて堕ちた瞬間であった。モデル動物は絶滅したニホンオオカミと四国犬の雑種か?

 以下、奥書。]

 

作物詞

      右追出來

拾遺百物語

 

 明和四亥春

     京六角通油小路西入町

       書林 小幡宗左衞門板

新說百物語巻之五終

 

[やぶちゃん注:ここに宣伝してある「拾遺百物語」は題名からしても本書の続篇らしいが、「続百物語怪談集成」の太刀川清氏の解題によれば、『出版された様子はない』とある。

 なお、底本には目録は存在しないが、予告通り、本ブログの読者のために、以下に、本文の表記で目録を配しておく。頭の巻内の番号は「続百物語怪談集成」に拠った(底本では標題番号は打たれていない)。「說」は拘った正字とし、「巻」は底本では総て「卷」ではなく、「巻」なので、統一した。読みは各ブログ標題に合わせ、附さずにおいた。]

 

 

新說百物語巻之一 目錄

 

一 天笠へ漂着せし事

二 狐鼡の毒にあたりし事

三 丸屋何某化物に逢ふ事

四 甲刕郡内ほのをとなりし女の事

五 津田何某眞珠を得し事

六 但刕の僧あやしき人にあふ事

七 修驗者妙定あやしき庵に出づる事

八 夢に見たる龍の事

九 見せふ見せふといふ化物の事

十 狐亭主となり江戶よりのぼりし事

 

新說百物語巻之二 目錄

 

一 相撲取荒碇魔に出合ひし事

二 奈良長者屋敷怪異の事

三 天井の龜の事

四 江刕の洞へ這入りし事

五 僧人の妻を盜し事

六 死人手の内の銀をはなさゞりし事

七 光顯といふ僧度々變化に逢ひし事

八 坂口氏大江山へ行きし事

九 幽霊昼出でし事

十 脇の下に小紫といふ文字ありし事

 

新說百物語巻之三 目錄

 

一 深見幸之丞化物屋敷へ移る事

二 橫田惣七鷹の子を取りし事

三 縄簾といふ化物の事

四 猿蛸を取りし事

五 僧天狗となりし事

六 狐笙を借りし事

七 あやしき燒物喰ひし事

八 猿子の敵を取りし事

九 親の夢を子の代に思ひあたりし事

十 先妻後妻に喰付し事

 

新說百物語巻之四 目錄

 

一 沢田源四郞幽㚑をとふらふ事

二 疱瘡の神の事

三 何國よりとも知らぬ鳥追ひ來る事

四 鼡金子を喰ひし事

五 牛渡馬渡といふ名字の事

六 長命の女の事

七 火災婆々といふ亡者の事

八 仁王三郞脇指の事

九 碁盤座印可の天神の事

十 澁谷海道石碑の事

十一 人形いきてはたらきし事

十二 釜を質に置きし老人の事

 

新說百物語巻之五 目錄

 

一 高㙒山にてよみがへりし子共の事

二 女をたすけ神の利生ありし事

三 神木を切りてふしきの事

四 定より出てふたゝひ世に交わりし事

五 肥州元藏主あやしき事に逢ひし事

六 ふしきの緣にて夫婦と成りし事

七 針を喰ふむしの事

八 桑田屋惣九郞屋敷の事

九 薪の木こけあるきし事

十 鼻より龍出でし事

十一 ざつくわといふ化物の事

 

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