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2023/06/28

佐藤春夫譯「支那厯朝名媛詩鈔 車塵集」正規表現版 「秋の鏡」趙今燕

[やぶちゃん注:書誌・底本・凡例等は初回を見られたい。本篇はここ。]

 

  秋 の 鏡

            憶 昨 花 前 別

            秦 淮 水 又 秋

            朝 來 怯 臨 鏡

            孤 影 空 自 愁

                  趙 今 燕

 

別れしは昨(きそ)、 花さく日

いま秦淮の水は秋

朝(あした)うたてきかがみには

わが面かげぞいたましき

 

   ※

趙今燕  十六世紀中葉。 明朝萬曆年間。 名は彩姬。 吳の人。 秦淮の名妓である。 才色ともに一代に聞えてゐた。 日ごろ風塵の感を抱いて妄(みだり)に笑(しやう)を賣ることを好まず、書を讀むことを喜び、靑樓集を著したといふ。

   ※

作者は明の第十四代皇神宗の時(万暦年間:一五七三年~一六二〇年)、「秦淮四美人」に数えられた美妓であった。標題は中文サイトを調べた限りでは、「臨鏡」である。以下に推定訓読を示す。

   *

 鏡に臨む

昨(きのふ)を憶(おも)ふ 花(はな)の前の別れ

秦淮(しんわい)の水(みづ) 又(また) 秋たり

朝(あした)の來たりて 怯(おび)えつつ 鏡に臨むに

孤影 空(むな)しく 自(おのづか)ら愁(うれ)ひあり

   *

・「秦淮」六朝時代の首都南京の近くを流れる川名(秦代に開かれた運河)。両岸には酒楼が多く、今に至るまで、風流繫華の地である。]

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