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2023/06/24

「新說百物語」巻之四 「釜を質に置し老人の事」 / 巻之四~了

[やぶちゃん注:書誌・凡例その他は初回の冒頭注を参照されたい。

 底本は「国文学研究資料館」のこちらの画像データを用いる。但し、所持する国書刊行会『江戸文庫』の「続百物語怪談集成」(一九九三年刊)に載る同作(基礎底本は国立国会図書館本とあるが、国立国会図書館デジタルコレクションで検索しても、かかってこないので、公開されていない)にある同書パートをOCRで読み込み、加工データとして使用させて戴いた。ここに御礼申し上げる。

 今回はここから。この篇も濁音脱落が多い。ママ注記が五月蠅いが、悪しからず。本篇を以って「巻之四」は終わっている。]

 

     釜を質に置《おき》し老人の事

 大宮の西に作兵衞といふもの、あり。

 六十余にて、妻子もなく、裏やを、かりて、ひとりすみけるか[やぶちゃん注:ママ。]、醒井通《さめがゐどほり》の「吉もんしや[やぶちゃん注:ママ。]」と云ふ質やへ、毎日、釜、ひとつ、持行《もちゆ》きて、鳥目《てうもく》百文、かりて、其錢にて、菜大根(な《だいこん》)をもとめ、是れを、町中、うりあるきて、その德分にて、何かを、とゝのへ、夜に入りて、「吉文字や」へ、釜を受《うけ》に行き、飯なと[やぶちゃん注:ママ。]、燒きて、また、あすの朝は、釜を持ち行き、鳥目百文かりて、もとて[やぶちゃん注:ママ。]とし、三年はかり[やぶちゃん注:ママ。]、暮しける。

 「吉文字や」の亭主、あるとき作兵衞にむかい[やぶちゃん注:ママ。]て、いふやう、

「最早、此釜も、三年の間、質物《しちもの》にとりて、利分も、過分に取りたり。毎日、毎日、苦勞の事なれは、此釜を、其元《そこもと》へ、遣はするなり。心やすく、あきなひ、いたさるへし[やぶちゃん注:ママ。]。」

と申しける。

 作兵衞、こたへて、いふやう、

「御心ざしは忝《かたじけな》けれとも[やぶちゃん注:ママ。]、私《わたくし》所持の物とては、此釜ひとつにて外に何のたくはへもなし。夫《それ》ゆへ[やぶちゃん注:ママ。]、朝、出《いづ》るにも、戶もたてす[やぶちゃん注:ママ。]、夜る、寐《ね》るにも、心やすし。中々《なかなか》、釜一つにても、家内にあれは[やぶちゃん注:ママ。]、心つかひ[やぶちゃん注:ママ。]なり。やはり、毎日毎日、御面倒なから[やぶちゃん注:ママ。]、質物に、御取《おとり》下さるへし[やぶちゃん注:ママ。]。」

と賴み、夫より、又、壱年斗《ばかり》通ひけるか[やぶちゃん注:ママ。]、迫付《おつつけ》、相果《あひはて》けるよし。

 「吉もんしや[やぶちゃん注:ママ。]」の亭主、聞きて、鳥目五百文、もたせて、樣子を見せに遣はしけれは[やぶちゃん注:ママ。]、成程、釜ひとつの外、何の、たくはへも、なく、近所の相借屋《あひじやくや》、打《うち》より、世話いたし、ほふむりけるよし。

 枕もとに、辭世とおぼしくて、反古(ほうく[やぶちゃん注:ママ。「ほうぐ」。])のはしに、發句あり。

「いかなる人の、かくて、ありしそ[やぶちゃん注:ママ。「ぞ」。]、心ゆかし。」

と、さた、しける。

   身は終(つい)[やぶちゃん注:ママ。]の薪《たきぎ》となりて米はなし

となん。

 名をば、「無窮(むきう[やぶちゃん注:ママ。「むきゆう」でよい。])」としたゝめたり。

「常には、物かく事もなかりしか[やぶちゃん注:ママ。]、手跡もよろしかりけり。」

となん。 新說百物語卷之五

[やぶちゃん注:実話奇譚。なにか、逢って話をして見たくなるような不思議な老人ではある。

「大宮」京都府京都市下京区大宮町(おおみやちょう:グーグル・マップ・データ)。

「醒井通」京都の醒ヶ井通。この南北の通り(グーグル・マップ・データ)。

「相借屋」「相店(あひだな)」に同じ。同じ大きな一棟の長屋を分割した借家人の者たち。]

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