佐藤春夫譯「支那厯朝名媛詩鈔 車塵集」正規表現版 「春のをとめ」薛濤
[やぶちゃん注:書誌・底本・凡例等は初回を見られたい。本篇はここ。]
春のをとめ
風 花 日 將 老
佳 期 猶 渺 渺
不 結 同 心 人
空 結 同 心 草
薛 濤
しづ心なく散る花に
なげきぞ長きわが袂
情をつくす君をなみ
つむや愁のつくづくし
[やぶちゃん注:作者薛濤は前回分を参照。本詩は前回分の続きの一篇である。
*
春望詞 其の三
風花(ふうくわ) 日に將に老いんとす
佳期(かき) 猶ほ渺渺たり
結ばず 同心の人とは
空しく結ぶ同心の草と
*
「佳期」ここは単なる「よい季節」「盛んな時」を表としつつ、さらに「楽しい時」「幸せな時期」の比喩の意のみではなく、より具体に「男女が逢うことを決めた時日」或いは「婚姻の日」の意を含ませている(この熟語にはそれら総ての意が実際にあるのである)ことは転・結句から言うまでもない。]
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