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« 只野真葛 むかしばなし (74) 井伊玄番守逝去直前の怪事 | トップページ | 只野真葛 むかしばなし (76) 命を救って命助かる奇譚 »

2023/07/29

只野真葛 むかしばなし (75) 妖狐譚(三話)

 

一、疱瘡やみのかさぶたを喰(くふ)は、まさしく、狐のわざなり。人の目には、病人の喰(くふ)と見えて、實は、狐のくふなり、とぞ。是は人に付(つき)たる狐の、じき咄(ばなし)しなり。實(まこと)に、さること、有(ある)なり。

 或庄屋、法事ふる舞(まひ)に行(ゆき)しに、手前、油物の、しごく、かげんよかりしを、もらいて、十枚ばかり、もちて還りしが、

『爰(ここ)らには、わるい狐がゐる所。』

と思ふと、晴たる月夜なりしが、眞黑に成(なり)たり。

 よくみれば、下壱尺ばかりは、月のひかり、見えて、其上は、くらし。

 是、狐の、此油物を、ほしがるなり。

『終(つひ)にばかしとらるゝよりは。』

と思(おもひ)て、木の根に、腰かけて、はしより、だんだん、くひしが、くひしまへば、空、晴(はれ)て、元の如く成(なり)しとぞ。

 十枚の油物、法事ふる舞の跡にて喰(くは)るゝものならず。後(のち)、食當りもせねば、是もやはり喰れしなり。

 日向桃庵(ひうがたうあん)、

「品川へ遊び、御殿山の夜の花、みん。」

と、大一座、たいこ持・藝者まで、かけて、三拾人近(ちかく)の人數(にんず)、いろいろの肴(さかな)もの、とりよせ、とりよせ、酒のみ、物くひして、遊ぶに、九ッ時分[やぶちゃん注:正午頃。]になり、

「サア、家の内へ、はいつても、よかろふ。」

と、誰か、いひだし、いづれも、

「それが、よかろふ、よかろふ。」

とて、立(たち)し時、みしに、取寄たる肴共(さかなども)、

「からり」

と、骨まで、なし。

「座中の人、殘らず、空腹なりし故、夜食を、いひ付て、食(たべ)し事、有(あり)しが、たしかに、狐に、くわれしならん。」

と語られし。

[やぶちゃん注:最初の、疱瘡病みの痂(かさぶた)食い(かなりエグい話である。しかし、私が高校時代、友人に「痂を食うのが好きだ」と公言していた奇体な男が確かにいた)を一話と数えた。

「日向桃庵」不詳。名乗りからみて、父の医者仲間か。

「御殿山」江戸時代から桜の名所として知られる。ここ(グーグル・マップ・データ)。当該ウィキも参照されたい。]

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