佐藤春夫譯「支那厯朝名媛詩鈔 車塵集」正規表現版 「思ひあふれて」子夜
[やぶちゃん注:書誌・底本・凡例等は初回を見られたい。本篇はここ。]
思ひあふれて
誰 能 思 不 歌
誰 能 飢 不 食
日 冥 當 戶 倚
惆 悵 底 不 憶
子 夜
思ひあふれて歌はざらめや
饑をおぼえて食はざらめや
たそがれひとり戶に倚り立ちて
切なく君をしたはざらめや
[やぶちゃん注:作者小夜は、既に先行する「女ごころ」と「むつごと」があり、佐藤の作者解説は前のリンク先に示してある。
以上の原詩は、所持する岩波文庫の松枝茂夫編の「中国名詩選」の「中」(一九八四年刊)を参考に訓読文と注を示す。
*
子夜歌
誰(たれ) 能(よ)く思ふて 歌はざらん
誰(たれ) 能(よ)く飢ゑて 食(くら)はざらん
日(ひ) 冥(く)れて 戶に當(あた)りて倚(よ)れば
惆悵(ちうちやう)して 底(なん)ぞ 憶(おも)はざらんや
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・「惆悵」恨み嘆くさま。
・「底」ここは反語の副詞としての用法。]
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