譚海 卷之五 越後國水中燈油を產するの事
[やぶちゃん注:句読点・記号を変更・追加した。]
○越後の國に、水中より、油を生ずる所あり。燈に點じ、用るに、臭氣、甚しけれども、終中(じゆうちゆう)、用(もちひ)て、盡ず。數村(すそん)の用に足れり。此油、はじめ、生(しやうず)る時、水底より、苔(こけ)のかたまりたるが如く、一ひらづつ、うき出(いづ)るを、下流に、柴(しば)を積置(つみおき)て取(とる)事也。此柴へ、苔のやうなるもの、ながれかゝりたるを、かきあつめて、しぼる時は、油、出(いづ)る、といふ。
[やぶちゃん注:これは、私の「諸國里人談卷之四 油が池」が大いに参考になる。参照されたい。そこでは、冒頭に、『越後國村上の近所の山中、黑川村【高田領也。】に、方十間余の池あり。水上に、油。浮ぶ。土人、芦(あし)を束(つかね)て水をかき搜(さが)して穗(ほ)をしぼれば、油、したゝる。それを煑かへして、灯の油とす。其匂ひ、臭(くさ)し。よつて「臭水油(くさうづのあぶら)」と云』とあって、この記載と類似している。
「終中」夜の間中の意であろう。]