佐々木喜善「聽耳草紙」 一五一番 蒟蒻と豆腐
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は初回を参照されたい。今回は底本では、ここ。]
一五一番 蒟蒻と豆腐
或日、豆腐が豆腐棚から落ちて怪我をした。それを聞いて、蒟蒻《こんにやく》はベツタリ、クツタリと步いて見舞いに行つて、豆腐どん、豆腐どん、おめア棚から落ちたソウですが、ラチも無アごツですなアと慰めた。
すると豆腐が、おめアは、丈夫でようげアすなアと言ふと蒟蒻は首を振つて、あアにええでだあんまヘン。每晚々々、コンヤクウ、コンヤクウと云はれて居るので生きたソラも無えでげアすよと答えたとさ。
(膽澤《いさは》郡水澤《みづさは》邊の話、森口多里氏からの御報告中の四。ラチも無いは、飛んでもないの意、又「おめアは」の「は」は、ワと發音しないでfaである。…此話、誰が聽いた、猫と鼠とが棚の隅で聽いたなどと、蛇足して語る所もある。)
[やぶちゃん注:附記は本文同ポイントとし、引き上げた。
「膽澤郡水澤」現在の岩手県奥州市水沢(グーグル・マップ・データ)。]
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