佐々木喜善「聽耳草紙」 一七七番 啞がよくなつた話
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は初回を参照されたい。今回は底本では、ここ。]
一七七番 啞がよくなつた話
或家で嫁子を貰つた。姑《しうとめ》が一寸《ちようと》小用に行つた間に棚探しをして口に饅頭一つを頰張つた。其所へ姑が顏を出して、これこれと呼んでも一向返辭が出來ないで、目を白黑にして居るから、これはてつきり啞《おし》になつたものと思つて、姑は山伏を賴んで來て御祈禱をして貰うことにした。
賴まれて來た山伏は屛風を立て𢌞して其中へ嫁子《あねこ》を入れて、さうして斯《か》う唱へた。
この間(マ)に
嚙み給へ
飮み給へ…
すると其御祈禱が直ぐ利いて、嫁子の啞がすつかりよくなつた。
(秋田縣角館小學校高等科一、柴靜子氏の筆記、
武藤鐵城氏の御報告の一二。一七九番の其の一
及び一八〇番。)
[やぶちゃん注:「秋田縣角館小學校高等科」恐らくは正式には当時は「角館尋常高等小學校」で、現在の秋田県仙北市角館町(かくのだてまち)東勝楽丁(ひがしかつらくちょう)のここが跡地(グーグル・マップ・データ)。サイド・パネルの碑を見ると、「角館小学校跡」とあって、下方に明治七(一八七四)年六月二日創立と記されてある。]
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