佐藤春夫譯「支那厯朝名媛詩鈔 車塵集」正規表現版 「月は空しく鏡に似たり」周文
[やぶちゃん注:書誌・底本・凡例等は初回を見られたい。本篇はここ。]
月は空しく鏡に似たり
醉 罷 月 已 明
照 我 還 照 君
如 何 君 不 見
只 見 天 邊 雲
周 文
醉ひざめの月のさやけさよ
君をも照らすものからに
君がすがたは見えもせで
ただわりなさの天つ雲見ゆ
※
周 文 明朝の妓女。 未詳。
※
[やぶちゃん注:巻末の「原作者の事その他」では「陳眞素」の後にあって『同上。』とあるだけなので、「陳眞素」のそれをそのまま移した。
本篇は中文サイトで検索したところ、第一句はどれも「醉罷見明月」となっている。或いは佐藤の示した一本があるのかも知れないが、こちらで推定訓読する。なお、標題は「有怀」で二首の一首である。
*
怀(おも)ひ有り
醉(ゑ)ひ罷(や)みて 月(つき) 已すでに明(あき)らかなり
我を照らし 還(ま)た 君(きみ)を照らす
如何(いかん)ぞ 君 見えず
只(ただ) 見る 天邊(てんへん)の雲を
*]
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