フライング単発 甲子夜話卷之五十一 8 毒鳥
[やぶちゃん注:現在、作業中である柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」のために必要となったので、フライングして電子化する。句読点の変更・追加と、読み・記号を加えた。]
22―8
〔甲子夜話巻五十一〕信州飯島〈長野県上伊那郡飯島町〉と云(いふ)所にて、土人異鳥を捕り得たり。大きさ小鴨ほどあり。人寄り合て食せんとて料理し、有合たる大鍋にて煮たるとき、熟するに従ひてその肉夥しくふえ、鍋の蓋を内より持挙ぐ。これを見る者懼て食する意なく、その辺の小川に棄てたり。翌日見ればその川の下流まで、大小の魚悉く死し浮きしとぞ。この鳥もしくは鶏〈一種の毒鳥。その羽を浸した酒をのめば死ぬという〉ならん歟との説なり。(堀和州話、飯田侯)
[やぶちゃん注:以下、底本では全体が一字下げで、漢文訓点附きであるが、それに従い、一部は読みや送り仮名を推定補訂して附し、書き下して示す。]
「本草」、「集解」に、『時珍、曰はく、「按ずるに、「爾雅翼」に云はく、『鴆は鷹に似て、大きく、狀(かたち)、鴞(ふくろふ)のごとく、紫黑色、赤き喙(くちばし)、黑き目。頸(くび)の長さ、七、八寸。雄(をす)を「運日」と名づけ、雌は「隂諧」と名づく。「運日」、鳴くときは、則ち、晴れ、「隂諧」、鳴けば、則ち、雨(あめふ)る。蛇(へび)及び橡(とち)の實(み)を食ふ。木石(ぼくせき)に、蛇、有るを知れば、卽ち、禹步を爲して、以つて之れを禁(ごん)ずる[やぶちゃん注:対象物に呪術をかけることを言う。]に、須臾(しゆゆ)に、木、倒れ、石、崩れて、蛇、出づ。蛇、口に入(いる)れば、卽ち、爛(ただ)れ[やぶちゃん注:爛れて溶解することを言う。]、其の屎(くそ)・溺(いばり)[やぶちゃん注:尿。]、石に着(つ)けば、石、皆、黃爛(わうらん)す。飮水(いんすい)の處[やぶちゃん注:鴆が水を飲む水場は。]、百蟲、之れを吸へば、皆、死す。惟(ただ)、犀角(さいかく)を得(う)れば、卽ち、其の毒を解(かい)す。』と。又、楊亷夫(やうれんふ)が「鐵厓集(てつがいしふ)」に云はく、『鴆は、蘄州(きしう)黃梅(くわうばい)の山中に出づ[やぶちゃん注:現在の湖北省黄岡(こうこう)市のここに「橫梅山(こうばいざん)」(グーグル・マップ・データ)はある。]。狀(かたち)、訓狐(このはづく)に類(たぐひ)す。聲、擊腰鼓(げきようこ)のごとし。大木の顚(いただき)に巢(すく)ふ。巢の下、數十步、皆、草、生ぜず。』と。」と。
■やぶちゃんの呟き
「信州飯島」現在の長野県上伊那郡飯島町(いいじままち:グーグル・マップ・データ)。
「本草綱目」の「鴆」の引用は、「漢籍リポジトリ」の同書の巻四十九「禽之三」の「鴆」の「集解」の当該部の電子化を参考に、影印本画像と校合した。静山の引用は[114-28a]の部分にある。なお、私の「和漢三才圖會卷第四十四 山禽類 鴆(ちん) (本当にいないと思いますか? フフフ……)」もリンクさせておく。二〇一九年のものだが、かなり注にリキを入れてある。
「堀和州」「飯田侯」可能性が高いのは、老中で信濃飯田藩第十代藩主堀親寚(ちかしげ 天明六(一七八六)年~嘉永元(一八四九)年)か。大和守なのは、この人物の前後の藩主たちも同じではあり、彼は静山より二十六も若いが、同藩の藩主では、飛び抜けて有名な人物であるので、彼を一応の候補とした。
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