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2023/08/05

譚海 卷之五 沙糖製造幷人參栽培の事 附飛鳥山・御殿山・神田柳原等櫻柳の事

[やぶちゃん注:句読点・記号を変更・追加した。]

○有德院公方樣[やぶちゃん注:徳川吉宗。]、國家の事に萬(よろづ)御心(みこころ)を用ひさせ賜ふ餘り、草木の事までも、御心に入(いれ)て御世話有(あり)しゆゑ、甘蔗(かんしよ)を御取寄有(おとりよせあり)て、濱御殿の畠に植(うゑ)させられ、さたう製法種々御沙汰有しかども、黑ざたうまでは出來たりしが、終《つひ》に、白を、なさずして止(やみ)たり。川崎大師、河原の住(すまひ)、池上幸政と云ふもの、此製法を好みて、多年、心を留(とめ)て、一筋に精力をはげまし、年を經て、工夫をこらしけるしるしありて、寶曆[やぶちゃん注:一七五一年から一七六四年まで。徳川家重・家治の治世。]中、終(つひ)に、白沙糖に製し得る法を考へ出(いだ)し、公儀へ訟(うつた)へ、御吟味の上、沙糖製法、弘(ひろ)く傳へ度(たく)願ひなど、御聞屆(おききとどけ)ありて、御觸(おふれ)等あり。當人、苗字幷(ならびに)帶刀をゆるし賜はり、神奈川の宿(しゆく)かたはらの、御林といふを預賜(あづかりたま)はり、甘蔗の植地(うゑち)になさしめ賜ひ、今、專ら製する事、くはしくなりぬ。又、和人參の事も、連々(つらつら)御世話遊(あそば)されしが、今は、所々に、植(うゑ)つけ、習ひて、製法する事となり、世上に、あまた弘(ひろま)りて、功驗(こうげん)もむなしからず、あまねく、病を救ふ便(たより)とは成(なり)ぬ。田村玄雄など云(いふ)醫師、殊に、人參製法に心を入(いれ)てものせしかば、典藥の外(ほか)に、仰付られ、賞美せさせ賜ふ。みな、御餘德(おんよとく)のむなしからざるしるしと、いふべし。神田川の土手に、淺草見付(あさくさみつけ)まで、柳を植させられしが、年を經て、林をなし、今は柳原と號して、遠近(をちこち)の目印と成(なり)、田舍人(いなかびと)の往來にも、よき便(たよ)りとなり、いつとなく、木陰(こかげ)には、安きものの店(みせ)、軒(のき)を並(ならべ)て、にぎはへる所となりたるも、繁華のにぎはひを、そへたり。其外、品川御殿山にも、はじ・ぬるでの樹などを植付られ、飛鳥山にも、櫻の樹、うえ付られて、春遊(はるあそび)の人の、にぎはふ所となり、本所・さかさゐの川岸の竹をも、御覽じ定められて、「矢竹(やだけ)に切るべき。」よしなど、おきて[やぶちゃん注:「掟」・「諚」か。]させ賜ふ。種々の事ども見聞するに、あげてかぞへがたき事共(ことども)にこそ。

[やぶちゃん注:「甘蔗」単子葉植物綱イネ目イネ科サトウキビ属サトウキビ Saccharum officinarum 。ただ、不審がある。当該ウィキによれば、同種の『栽培種の起源はニューギニア島とその近くの島々と言われ、世界各地の熱帯、亜熱帯地域で広く栽培される』ものの、『現在の日本国内におけるサトウキビの商業栽培の最北限は、四国から伝播した本州の遠州横須賀地区(静岡県掛川市南西部)とみられるが、昭和』三十『年代までは』、『南房総地域でサトウキビが栽培されていた歴史がある』とあるだけで、江戸時代に横浜の海浜に近い位置でサトウキビが有意に栽培出来たのであろうか? という疑問があるのである。

「池上幸政」底本の竹内利美氏の注に、『池上太郎左衛門幸豊』の誤記とされ、『武蔵国橘樹郡』(たちばなのこおり)『大師河原』(現在の神奈川県川崎市川崎区大師河原:グーグル・マップ・データ)『の名主で、宝暦十二年』(一七六二年)、『池上新田を開き、安永六年』(一七七七年)『には大島村の開拓もした。また甘蔗栽培に努め、砂糖の製法ひろめるなど、産業開発に功績があった。寛政十年』(一七九八年)『歿』とある。

「柳原」サイト「人文学オープンデータ共同利用センター」のこちらで江戸切絵図と地理院図の重ねで確認出来る。

「はじ」双子葉植物綱ムクロジ目ウルシ科ウルシ属ハゼノキ Toxicodendron succedaneum

「ぬるで」ムクロジ目ウルシ科ヌルデ属ヌルデ変種ヌルデ Rhus javanica var. chinensis

「さかさゐ」現在の千葉県柏市逆井(さかさい)か。]

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