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2023/08/09

譚海 卷之八 諸獸の論幷獵犬の事 /(フライング公開)

[やぶちゃん注:現在、作業中である――ある仕儀(それは、近々、公開を開始する新規予定の続き物でね――それまでは――「ヒ、ミ、ツ♡」)――のために必要となったので、フライングして電子化する。句読点の変更・追加と、読み・記号を加え、読み易さを考えて、ちょっとゴタゴタして、整理されて記されておらず、しかもダラダラと長目なので、特異的に改行・段落を成形した。]

○猪は常にあるゝ[やぶちゃん注:「荒るる」。]獸にあらず。人を見れば、甚(はなはだ)、おそるるなり。能(よく)寢る事をすといへども[やぶちゃん注:底本の『日本庶民生活史料集成』版では「寢能る」。国立国会図書館デジタルコレクションの国書刊行会版(大正六(一九一七)年刊)の当該部で訂した。]、只、一日寢るなり。能(よく)くたびれ、腹の枵(すき)[やぶちゃん注:珍しく底本のルビである。この漢語は「空しい・うつろ」の意。]たるときは、いつも暮比(くれごろ)には起(おき)て、食を、もとめ、あるくなり。米・麥の穗をはじめ、芋、大小豆(だいず・あづき)、何にても、食ざる事、なし。鼻は尺八の尻によく似て、穴二つある計(ばかり)の違(ちがひ)なり。常は柔(やはらか)なるものなれど、怒(いかる)ときは、石の如く、堅く成(なり)て、石をも掘返(ほりかへ)す勢ひなり。猪の肝下(きもした)に、きせる筒のごときもの有、是を「はちたち」と云。[やぶちゃん注:不詳。位置と形状からは、胆囊(たんのう)のようだが。]此處へ鐵炮玉、いあてらるれば、甚、怒を生じて、人をも、何をも、さけず馳(はせ)あるくなり。其後は鐵炮玉、いくつ打(うた)れても、死ぬる事、なし。肝に打(うち)つけられねば、死(しぬ)事なく、野山を咆猛哮吼(はうまうかうく)して、あるくなり。猪の子は、眞桑瓜(まくはうり)のごとく、黃色にて、靑き筋(すぢ)有(あり)、むくめきて[やぶちゃん注:むくむくとうごめくようにして。]、はねありく。一度に十二疋づつ、產すれども、多(おほく)は、「ひきかへる」に、なめらるれば、死(しぬ)ゆゑ、ふたつ、みつ、ならでは、生殘(いきのこる)事、なし。

[やぶちゃん注:「猪」北海道を除く本土産は哺乳綱鯨偶蹄目イノシシ亜目イノシシ科イノシシ属イノシシ亜種ニホンイノシシ Sus scrofa leucomystax 。博物誌は「和漢三才圖會卷第三十八 獸類 野豬(ゐのしし) (イノシシ)」を参照。]

 鹿の角も、「ひきかへる」、なむれば、消(きえ)うするなり。

 鹿は、春の末、多羅葉(たらば)のめ、出(いで)しを、くへば、そのまゝ、角をおとすなり。それより、毛の色、うつくしく成(なり)て、星、あざやかに、生(しやう)ずるなり。「ふくろ角(づの)」と云(いふ)物、生(はえ)て、段々、秋の彼岸(ひがん)後、もとのごとくに長ずるなり。毛の色も、秋の氣に入(いる)時は、くもりて、星、うすく成(なる)なり。鹿の妻懸(つまごひ)は、秋の末なり。とつぐも、只(ただ)、一度なり。ふたたびと、せず。鹿は、年々、子を壹疋ならでは、產せず。

[やぶちゃん注:「鹿」現在の本邦では、哺乳綱鯨偶蹄目反芻亜目シカ科シカ属ニホンジカ Cervus nippon(亜種分類ではホンシュウジカ Cervus nippon aplodontus・キュウシュウジカCervus nippon(四国・九州など)・ケラマジカCervus nippon keramae(慶良間列島。江戸時代に九州から移入されたもの)マゲシカCervus nippon mageshimae(馬毛島。二個体を基に記載されたものの、種子島の個体群を含んだり、分類上の位置は明確ではない)・ツシマジカCervus nippon pulchellus(対馬)・ヤクシカCervus nippon yakushimae(屋久島)・エゾシカCervus nippon yesoensis(北海道)の七亜種となる。但し、ニホンジカは日本固有種ではなく、中華人民共和国・ロシアにも棲息する。朝鮮民主主義人民共和国・ベトナムでは絶滅したと考えられており、大韓民国では絶滅した。詳しくは「和漢三才圖會卷第三十八 獸類 鹿(しか) (シカ・ニホンジカ他)」を参照されたい。]

 甲州の狩人、猪(ゐの)しゝを、壹疋、打(うて)ば、百姓より、褒美として、金百疋、貰(もらふ)なり。鹿は、二疋うちて、百疋、もらふなり。

 狩人(かりうど)、犬をかけて[やぶちゃん注:追い駆けをさせて。]、猪を、とるなり。犬五疋も持(もち)たる狩人は鐵炮に不レ及(およばず)、犬、つひに、猪を、くひころすなり。犬を、かくれば[やぶちゃん注:同前。]、犬、猪の子を、先(まづ)驅出(かけいだ)して、くらふ。母の猪、是を、うれへて、犬を追(おひ)かくる時、狩人、てつぼうにて、うつ事なり。

 甲州に、熊は、稀なり。柴熊といふものは、多(おほく)あり。是は月の輪は、なし。力も熊よりは劣(おとり)たり。樹にのぼりえず。出る時は、五、六疋も、つらなりて、あるくなり。

[やぶちゃん注:「柴熊といふものは、多あり。是は月の輪は、なし」北海道を除く、本州・四国・九州に日本固有種として一種のみ棲息していた(九州は一九五七年の幼獣死骸を自然個体を最後として絶滅したと考えられている)哺乳綱食肉目クマ科クマ亜科クマ属ツキノワグマ亜種ニホンツキノワグマ Ursus thibetanus japonicus は、特徴とされる胸部の三日月形(或いはアルファベットの「V」字状)の白い斑紋が全くないか、ごく目立たない個体も稀ではなくおり、生育途中の子熊は木に登るのは、それほど上手くない。そうした個体を、かく、呼んだものであろう。博物誌は「和漢三才圖會卷第三十八 獸類 熊(くま) (ツキノワグマ・ヒグマ)」を見られたい(同記載では特異的に松前藩領へ言及され、その中にクマ属ヒグマ亜種エゾヒグマ Ursus arctos yesoensis が記されている)。]

 常の熊は、よく、樹にのぼる事をす。むじなも、樹にのぼる事をす。狐も、おなじ。

[やぶちゃん注:「むじなも、樹にのぼる事をす」この場合の「むじな」は、ニホンアナグマではなく、ホンドタヌキのことを指しているものと思われる。「タヌキは木に登らないでしょう?」と言われる御仁、柳田國男みたいな、いい加減なこと、言わんで下さいよ! タヌキはイヌ科の動物の中では、特異的に木に登ることが出来る数少ない種であるのに、柳田は「自序・妖怪談義(狭義の正篇)」で、「猫は木に登れない。狸も登れない。」と考えているのだが、これは致命的な誤りであって、ネコもタヌキも、しっかりがっちり、木に登るのだ!]

 猿は、樹にのぼりては、あなたこなたの枝へ、飛(とび)うつる事、五、六間[やぶちゃん注:九・一から十一メートル。]を、へだつるを、たやすく、とぶなり。猿の子は、鼠の大(おほき)さのごとし。母猿の尾の上に、しかと取付(とりつき)て、母猿、いかやうに飛かけりても、おつる事、なし。平(たひら)なる枝に、母猿、坐して、手を、まはして、尾のうへの子を、とり、乳をのましめ、掌(たなごころ)に、すゑて、愛する事、人間の體(てい)に、かはらず。子猿、よほど大(おほき)く成(なり)ては、樹を、とびあるきて、木(こ)のみを、口中に、したゝか含(ふくみ)て、あぎと[やぶちゃん注:「顎(あぎと)」・「頰」。]の、ふくれるほどになる時、母猿、やがて、立寄(たちより)て、口の中なる木の實を、引(ひつ)たくりて、をのれ、くらふ、子猿、嗚(なき)さけべど、引(ひき)ふせて、うごかさず。愛憐の情も、食物にわするゝは、畜生のこゝろなり。猿、はらみて居(を)れば、狩人を、みれば、腹を、ゆびさして、はらみたる事を示す。それをば、うたず、と云。老たる猿は、大かた二疋、枝上(えだのうへ)に並坐(ならびざ)して、ひとつの猿、かたはらの猿の背を、うてば、うたれて、やがて、そのさるの膝を、枕にして、よりふすとき、蚤(のみ)をとりてやるを、とりては、口に入(いれ)、とりては、口に入して、頭より、手足にいたる迄、とり盡して、引(ひき)おこせば、又、かはりて、しらみをとりてやる。たがひに、かくのごとくする事、をかしき軆(てい)なり。しらみをとる手の、はやき事、いはんかたなく、おもしろき事と云。

[やぶちゃん注:「蚤」「しらみをとる」言わずもがなだが、ノミを取っているのではない(毎晩、寝床を変える野生のニホンザルにはノミは寄生しようがない)。実際に何を口入れているのかは、実は正確には判っていない。シラミ或いは乾燥して剝がれた皮膚片、又は、皮膚に結晶した塩分とも言われてはいる。というよりも、群の中での順位(主従関係)の示唆や親愛を表明するところの毛繕い、「グルーミング」である。]

 山には、狼(おほかみ)の外に「山いぬ」と云(いふ)有(あり)。狼は、瘦(やせ)て、腹、ほそく、手足、ほそく、「山いぬ」は、ふとりて、手足、細し。狩人、あやまりて「山いぬ」を、壹疋、うちとむとき、夜々、諸百の「山いぬ」、あれ、怒りて、往來成(なり)がたき事に到るなり。但(ただし)、ふじの根がたの村にのみ、つねに、山犬をうちころす事とす。

[やぶちゃん注:「山犬」はニホンオオカミではない、野良犬のことを指す。野良犬、則ち、「野犬」(のいぬ)を「ノイヌ」と和名学名に記すのは、私は悪しき表記と考えていることをここで表明しておく。]

 「むじな」は、ともすれば、「小豆(あづき)あらひ」・「絲(いと)くり」などする事、有(あり)。「小豆あらひ」は、溪谷の間(かん)にて、音するなり。「絲くり」は、樹のうつぼ[やぶちゃん注:大きな木の中に生じた洞(ほら)。]の中にて、音、すれど、聞(きく)人、十町廿町[やぶちゃん注:一・九一~二・一八メートル。]行(ゆき)ても、其音、耳を、はなれず、おなじ事に聞ゆるなり。

 狩人の犬は、つねは、繩付(つけ)て。山へ牽行(ひきゆき)て、獸(けもの)をみれば、繩を解(とき)て、心のまゝ、放(はなれ)、かくるなり。よるに入(はい)ときは、其まゝに、狩人は、かへれども、犬を、跡に、とめて、かならず、かへりくるなり。又、竹を切(きり)て笛となし、ふくときは、一里、二里、遠近(をちこち)に放(はなち)たる犬も、皆、聞付(ききつけ)て、そこに歸りよらざる事、なし。

 山犬を、とるには、石の室(むろ)を、こしらへ、その内に、かくれ居て、犬の長鳴(ながなき)するこゑをして、地にふして、長く、鳴(なき)まねをすれば、山に、其聲、ひゞきて、山いぬ、出(いで)くるなり。室のまへに、獸(けもの)の肉を蒔置(まきおい)て、山犬、それを、くらふを、室のうちより、てつぼうにて、打(うち)とむるなり。

 又、狩人のうちたるけものは、鹿・猪のたぐひにても、山に、すて置(おく)に、山いぬ・狼など、鐵炮のあとのあるをば、くらふ事、なし。狩人、その皮を、はぎとりたるをみて、其の後(のち)、その肉を喰(くら)ふなり。是は、狩人のものを、くへば、おのれ、うたれん事、恐(おそれ)て、くはぬなり。

 猪は、田に入(いり)て、深く泥を、うがち、ほりて、それを、身にまとひ出(いで)て、松の樹によりて、泥のうへに「松やに」を、すりつくるゆゑ、うるしにて。かためたるやうに、毛、とぢあひて、大ていの鐵炮の玉は、とほりがたきやうに成(なる)事なり。

 兎は、子をうみすつるゆゑ、時々、山に有(ある)を、とらふるなり。前脚(まへあし)、みじかきゆゑ、くだり坂には、よく、とらへらるゝなり。

 

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