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2023/08/03

譚海 卷之五 同所新渡唐本の事

[やぶちゃん注:句読点・記号を変更・追加した。]

○或人、長崎へ行(ゆき)たるに、『華物(くはもの)のわたりきたる地なれば、唐本(からぼん)などは、殊に、何にても、心にまかせて、えらるべし。』と、おもひ、其地の本屋と號する店へ行(ゆき)て、種々、注文の書をとひ試(こころみ)しに、一事も、辨ずる事なく、却(かへつ)て、江戶の人よりも、うとく、本屋とは號すれども、一向、書籍の名目を辨知(べんち)する[やぶちゃん注:よく弁(わきま)えて説明する。]事、なし。ふしぎに思ひて、人に叩(きき[やぶちゃん注:非常に珍しく、底本のルビである。])たれば、「その事なり。長崎にて『本屋』と號するものは、新渡(しんわたり)の本を、引受(ひきうけ)、何と云ふわけもなく、いくらも荷物に拵(こしら)へ、貫目(かんめ)にふりて[やぶちゃん注:単に書物の重さで振り分けて。]、貫目の價(あたひ)を得て、渡世とする事ゆゑ、一向、書物の名目には、かゝりあはず。此書物荷(しよもつに)、大坂へ到着し、大坂の書林、會合(くわいがう)して、開封し、はじめて、書籍の名目を、わけ、『ことしは、何々の本、多くわたり、何々は、拂底(ふつてい)也。』など、定(さだめ)て、入札をもする事也。此譯(このわめ)ゆゑ、書物の價も、大坂にて、はじめて定(さだま)る也。長崎の本屋は、只、新渡の本を、世話にして、荷造(にづく)り、大坂へ廻す斗(ばか)りを、渡世なれば、本の名目は、しらぬ筈也。」と、いへり。一笑に堪(たへ)ざる事なり。又、長崎地士(ちし)に、公儀御用、相勤(あひつとむ)る儒者あり。「新わたり」の書、あれば、先(まづ)、此儒者、一覽吟味して、少しにても、天主の事に拘(かかは)り、似(に)よりたる事あれば、申上(まふしあげ)て、停止(ちやうじ)し、又、少し計(ばかり)の所は、その所を、切取(きりとり)て、落丁の如くにして、世上へ出(いだす)す也。それゆゑ、「五雜俎」などは、十枚ほど、唐本にくらぶれば、落丁あり。少少(しやうしやう)、天主の事ありといへども、さのみ、障(さはり)に成(なる)べき事にもあらねど、長崎にて、儒者のきりとりたるゆゑ、如ㇾ斯(かくのごと)し。今、和本にあるは、落丁のまゝを、再刻(さいこく)したるものなり。徂徠先生、唐本の全本を、校合(きやうがう)して、書入(かきいれ)られたる物、深川本誓寺知立(ちりふ)上人、書藏にありしが、今は、いかが成(なり)ぬるにや、いぶかし。」と、ある人の物語りぬ。

[やぶちゃん注:「五雜俎」「五雜組」とも表記する。明の謝肇淛(しゃちょうせい)が撰した歴史考証を含む随筆。全十六巻(天部二巻・地部二巻・人部四巻・物部四巻・事部四巻)。書名は元は古い楽府(がふ)題で、それに「各種の彩(いろどり)を以って布を織る」という自在な対象と考証の比喩の意を掛けた。主たる部分は筆者の読書の心得であるが、国事や歴史の考証も多く含む。一六一六年に刻本されたが、本文で、遼東の女真が、後日、明の災いになるであろう、という見解を記していたため、清代になって中国では閲覧が禁じられてしまい、中華民国になってやっと復刻されて一般に読まれるようになるという数奇な経緯を持つ。不全本でも、本邦で本草学者に大いに活用されたのだから、「瓢簞から駒」のような事実があるのである。

「深川本誓寺知立上人」いつもお世話になる松長哲聖氏の首都圏を中心とした寺社データベースサイトである「猫の足あと」の当該寺院の解説によれば、浄土宗当智山重願院本誓寺(ほんせいじ)で、現存する(グーグル・マップ・データ)。『小田原本誓寺六世の文賀が、幕府より文禄四』(一五九五)年に、『八重洲河岸に寺地を拝顔して創建、太田康資(太田道灌の四代の孫)娘英勝院が開基となったと』され、慶長一一(一六〇六)年に『馬喰町上町へ』、天和二(一六八二)年、『当地(深川大工町)に移転、元禄』一二(一六九九)年には、『徳川綱吉から寺領』三十『石の御朱印状を拝領、江戸時代の浄土宗触頭の一つであったと』される由緒ある寺である。但し、ここに出る「知立上人」は不詳である。]

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