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2023/09/01

柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」 「長壁神」

[やぶちゃん注:本書は昭和三六(一九六一)年一月に東京堂から刊行された。この総題の「随筆辞典」はシリーズ物の一書。本書については、初回の冒頭注を、また、作者については、私の『柴田宵曲 始動 ~ 妖異博物館 「はしがき」・「化物振舞」』の私の冒頭注を参照されたい。

 底本は国立国会図書館デジタルコレクションのこちらを使用した。新字新仮名である。但し、加工データとして、所持する筑摩書房『ちくま文芸文庫』の「奇談異聞辞典」(底本を解題したもの・二〇〇八年刊)を加工データとして使用させて貰った。ここに御礼申し上げる。

 読みが振れる、若い読者が躓くかも知れぬ箇所には《 》で読みを添えた。引用文の場合は歴史的仮名遣を用いた。なお、( )は柴田自身が附したルビである。

 また、柴田のストイックな編集法を鑑み、私の注は、どうしても必要と判断したもののみとした。幸い、有意な部分は私が既に電子化注したものがあるので、それをリンクさせてもいる。但し、この原本は新字新仮名であるため、私が電子化していない引用文の原本に当たることが出来たものは、極力、視認出来るように、国立国会図書館デジタルコレクションや他のデータベースの当該部をリンクさせるように努めた。

 なお、辞典形式であるので、各項目を各個に電子化する。公開は基本、相互の項目に連関性がないものが多いので、一回一項或いは数項程度とする。

 

 長壁神【おさかべのかみ】 〔甲子夜話続篇巻八十〕寅の半といふに有年《うね》[やぶちゃん注:現在の兵庫県赤穂市有年(グーグル・マップ・データ)。同地区有年牟礼(うねむれ)に旧山陽道の宿の「牟礼本陣跡」がある(同前)。]をたち、申の刻<午後四時>ばかりに姫路の城下にいたり、酒井侯の旅館に宿れり。予が少年のころ聞きしは、此ところの長壁(おさかべ[やぶちゃん注:ママ。])といへる神は、時々そのかたちを現《あらは》すと聞きしを念《おも》ひ出《いで》て、聴《きき》てみよと左右に云ひたれば、時ふしあき人[やぶちゃん注:「商人」。]の来りゐしにこのこと問ひたるに候といふ。いづれにあると聞くに、この城中にありといふ。宮居ありやと聞けば、宮居は天守櫓の上層《うへのだん》にありといふ。またいふ。この天守をわれ等の見候ことは、夏城中の器物暴凉の候とき、その器の事にあづかる職人此処に入ることあり、その時職人に頼み其処にいたれば覧ること候、さて天守は下より上まで五層《だん》にて、下のだんの広さ、聞伝へは千畳鋪といひ候、その内ことにひろく候得《さうらえ》ば、畳百枚づつばかりを十処《とどころ》に積みあげたり、この畳みな高麗縁(こうらいべり[やぶちゃん注:ママ。])なるが、みな蠹《むし》ばみ腐れ用ふべからず候、梯《はしご》は櫓《やぐら》の隅よりかけ、陞《のぼ》ること嶮《けん》にして高く、常に綱を下《くだ》しこれを引《ひき》てのぼる。一層《だん》ごとにかくして、上層《うへのだん》は五間方《はう》も候はむが、長壁の宮はこのところに候、当処にては長壁大明神と称す、宮は赤く漆(ぬ)り、金《かな》ものうち、囲《まはり》には幕を垂れてあり、処の長源寺真言宗、この神のこと承まはり、日々卯の刻に供物をそなへ候、素木《しらき》の三方膳に土器(かはらけ)を置き、一つには小豆飯、一つには油揚げ豆腐をもる、きゝ伝へ候に、この供物明朝にはみな失せさりて無く、神の食たまふと申候、長源寺障ることあれば、不動院といへるが供物を献じ候といふ。予<松浦静山>問ふ、さらばこの神はいかなる神や。答ふ、その事は知らず候が、この神まことの所在は山上にありて、この山を姫山といひ、天守の側《そば》にあり、すべて山二つあり、一つは男山、一つは姫山とて相ならびて、ひくき山にも候はねども、天守は姫山の根よりつくりたてたれば、ひとしほ高く聳え候、また男山姫山とも城中にて候、男山には過ぎにし領主榊原侯の居城にて候ひしとき勧請ありしとて、今八幡の宮といふあり、姫山は長壁明神ましますとて山下より高き磴(いしだん)あり、上には穴あり、この中に神ありと聞き候、まことの御有《おんあり》かはこゝにて候と語る。依《より》て再びやどの奴僕《ぬぼく》に問はしめしに、その言《げん》に異ならず。かの長壁はいかなる神にかますらむ。かゝる天守の高き所に棲みたまひぬれど、いかばかりか今の昇平を楽しく思ひたまふらむ。しかればこの神も東照権現の深仁に浴して、なほ御代の護りをなしたまふとぞ覚ゆ。 〔筱舎漫筆巻五〕世に長壁(おさかべ[やぶちゃん注:ママ。])の神といふが、姫路の天守の上の壇に住めるよしいへるは、うきたることかと思へば、さにあらず。いまも上のだむ[やぶちゃん注:「段」。]はまくら[やぶちゃん注:「眞暗」。]にて、人《ひと》上ることを得ずとぞ。社は城内にありて、つねに祭りおこたらずとぞ。女神のよし、天守の上のだむは六畳敷となん。木下秀吉の作りしなるべし。

[やぶちゃん注:「甲子夜話」のそれは、事前に『フライング単発(部分) 甲子夜話續篇卷之八十『寬政紀行』の内の寛政十二年十一月五日の姫路での記事』として電子化注をしておいたので、そちらを見られたい。

「筱舎漫筆」(ささのやまんぴつ)は「牛と女」で既出既注。国立国会図書館デジタルコレクションの『日本隨筆大成』第二期第二巻(昭和三(一九二八)年日本随筆大成刊行会刊)のこちらで正字で当該部が視認出来る。標題は『○をさかべの神』である。]

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