フライング単発 甲子夜話続篇卷之十二 7 天狗災火を走る
[やぶちゃん注:現在、作業中である柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」のために必要となったので、フライングして電子化する。句読点の変更・追加と、読み・記号・改行・段落を加えた。]
12-7
或人の語りけるは、
「世に火災あるは、天狗、火焰の中を、走り𢌞(まは)りて、火勢を助(たす)く。」
と。
また、近頃、某(なにがし)の話せしは、
「去(いんぬる)冬、小石川に火事ありしとき、人の鼻をつまむ者、ありて、目には見えず。步行(ありき)の者は、若(も)しや、傍人(かたはらのひと)の爲(なせ)しも知らざれど、馬上の者も、斯(かく)の如く、或ひは、耳をひくことも、有りし。」
とぞ。
「これも、天狗の所爲(しよゐ)ならん。」
と言ヘり。
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