フライング単発 甲子夜話續篇卷之五十一 8 松浦和州、東覲の旅途聞說【三事】(の内、二つ目の肥前神崎の「雷狩」の部分)
[やぶちゃん注:現在、作業中である柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」のために必要となったので、フライングして電子化する。句読点の変更・追加と、読み・記号・改行・段落を加えた。標題の「東覲」は「とうきん」で参勤交代のこと。]
51-8(部分)
又、曰(いはく)、肥前國神崎(かんざき)にて聞く。此處、三、四月の頃に、「雷狩(カミナリカリ[やぶちゃん注:静山のルビ。])」と云ふこと有り。
その「雷」と稱する者は、その形、白雲(しらくも)の如くにして、大きさ、鞠(まり)の程なる、圓(まど)かなるものなり。
空中を飛行(ひぎやう)す。
時として、人家の上に墜(おつ)ることあり。然(しか)るときは、忽(たちまち)、火災となる。
或(あるい)は、原艸(はらくさ)の間(かん)に墜ること有れば、其火、沒して見へ[やぶちゃん注:ママ。]ずと。
故に里人《さとびと》、これを畏れ、此物、飛來(とびきた)ること有れば、廼(すなはち)、衆人、家器(かき)をかたづけ、屋脊(をくはい)に水桶(みづをけ)を上げ、金鼓(きんこ)を鳴(なら)して、これを逐(お)ひ、火災を避(さ)く。
「此こと、四、五年間には、必ず、有り。」
と云(いふ)。
■やぶちゃんの呟き
「肥前國神崎」佐賀県神埼(かんざき)市神埼町(かんざきまち:グーグル・マップ・データ)。鎌倉時代より前は皇室領荘園であった。