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2023/10/20

甲子夜話卷之七 17 松平越州、箱根關所に於て番頭を賞する事

7-17

 松平樂翁、顯職(けんしよく)のとき、公用にて、上京のこと、あり。

 其道中、箱根山を越すときは、步行(かち)にて、笠を著(つけ)ながら、御關所を通られけるが、御關所の番士は、何れも白洲に平伏せしに、番頭(ばんがしら)、一人、頭を擧げ、聲をかけて、

「御定法(ごぢやうはふ)に候。御笠、とらせらるべし。」

と云。

 樂翁、卽(すなはち)、笠を、ぬがれ、通行して、小休(しやうきう)の處より、人を返して、彼(かの)番頭に申遣(まふしや)るゝは、

「先刻、笠を着(ちやく)しは、我ら、不念なり。御定法を守りたること、感入(かんにいり)候。」

との挨拶なり。

 此事、道中、所々に言傳へて、其貴權に誇らず、御定法に背(そむ)かれざりしを以て、增す增す、感仰(かんぎやう)せりと云。

■やぶちゃんの呟き

「松平樂翁」「白洲」陸奥国白河藩第三代藩主にして老中首座、徳川吉宗の孫であった松平定信。

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