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2023/10/19

畔田翠山「水族志」 カゲキヨ (ホウセキキントキ・キントキダイ・チカメキントキ・クルマダイ・キンメダイ・イットウダイ・アカマツカサ)

(三一)

カゲキヨ【紀州若山】 一名ヘイケイヲ【紀州日高郡網代浦】サケナヒ【紀州在田郡湯淺浦】セウゼウ【同上】メジロダヒ【伊豫西條】メイチ【熊野】アカコ【讚州高松領津田浦】ジウイヲ【紀州田邊】ムマヌスト【筑前姪ノ浜】カ子ヒラ【土佐浦戶勢州阿曾浦熊野大島】ベンケイ【勢州慥柄浦】ウミゴ【尾州常滑】アカメバチ【熊野天口浦】メヒカリ【同上】 紅沙

形狀棘鬣ニ似タリ鱗細也下頗赤色ニ乄端尖テ口ヨリ出テ上ニ向フ

唇赤色頰ニ白刺一ツアリ眼大ニ乄赤色瞳黑脇翅淡黃色身ハ頭ヨリ

尾ニ至リ背色深紅色腹淡紅色背鬣紅色ニ乄黃色ノ星㸃相並ブ尾赤

色岐アサシ腹下翅淡紅色ニ乄黃星㸃アリ刺赤色腰下鰭赤色其大者

二尺許身濶ニ乄紅色淺ク眼大ニ乄光アリ臺灣縣志曰紅沙皮紅如塗

硃鱗細

○やぶちゃんの書き下し文

かげきよ【紀州若山。】 一名「へいけいを」【紀州日高郡網代浦。】・「さけなひ」【紀州在田(ありだ)郡湯淺浦。】・「せうぜう」【同上。】・「めじろだひ」【伊豫西條。】・「めいち」【熊野。】・「あかこ」【讚州高松領津田浦。】・「じういを」【紀州田邊。】・。「むまぬすと」【筑前姪ノ浜。】・「かねひら」【土佐浦戶。勢州阿曾浦。熊野大島。】・「べんけい」【勢州慥柄(たしから)浦。】・「うみご」【尾州常滑。】・「あかめばち」【熊野天口浦。】・「めひかり」【同上。】 「紅沙」

形狀、棘鬣(まだひ)に似たり。鱗、細なり。下頗、赤色にして、端、尖りて、口より出でて、上に向ふ。唇、赤色。頰に、白き刺(はり)、一つあり。眼(まなこ)、大にして、赤色。瞳、黑。脇翅(わきひれ)、淡黃色。身は、頭より、尾に至り、背の色、深紅色。腹、淡紅色。背鬣、紅色にして、黃色の星㸃、相(あひ)並ぶ。尾、赤色。岐(また)、あさし。腹の下翅(したびれ)、淡紅色にして、黃の星㸃あり。刺、赤色。腰の下鰭、赤色。其の大なる者、二尺許(ばかり)。身、濶(かつ)にして、紅色、淺く、眼、大にして、光、あり。「臺灣縣志」に曰はく、『紅沙。皮、紅なり。塗硃(としゆ)のごとく、鱗、細なり。』と。

[やぶちゃん注:底本のここ。さて、種同定であるが、国立国会図書館デジタルコレクションの宇井縫蔵氏の「紀州魚譜」(第三版・昭和七(一九三二)年刊)のこちらの記載に従って、各地で複数種が「カゲキヨ」の名で呼ばれるので、

顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ亜目キントキダイ科キントキダイ属ホウセキキントキ Priacanthus hamrur

キントキダイ属キントキダイ Priacanthus macracanthus

キントキダイ科チカメキントキ属チカメキントキ Cookeolus japonicus

キントキダイ科クルマダイ属クルマダイ Pristigenys niphonia

の四種を、まず、挙げることとする。さらに、前回の「カネヒラ」が、以上の異名に出現することから、

硬骨魚綱条鰭亜綱棘鰭上目キンメダイ目イットウダイ科アカマツカサ亜科エビスダイ属エビスダイ Ostichthys japonicus

も入れる。これらは「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の異名「カゲキヨ」でも、総てが載る。同ページでは他に、

キンメダイ目イットウダイ科イットウダイ亜科イットウダイ属イットウダイ Sargocentron spinosissimum

キンメダイ目イットウダイ科アカマツカサ亜科アカマツカサ属アカマツカサMyripristis berndti

の二種が挙げられているので、これも入れる。これで、「景清」の同定比定のオール・スター・キャストということになる。宇井氏は「紀州魚譜」をまず、「カゲキヨ」のホウセキキントキを最初とし、キントキダイとチカメキントキを次候補としているように読める。そして続くクルマダイを入れたのは、そこの『往々前種』(チカメキントキ)『と混同する』とあったことに拠る。但し、以上の六種は、見かけ上、よく似ているものもあるが、ちょっと一緒にするのはクエスチョンの種もあることはあり、私も宇井氏にならって、美麗なる同定第一候補は「ホウセキキントキ」としておく。畔田の観察が生魚のものであるとすると、「星」状の点も解消する。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページをリンクさせておくが、その二枚目の写真をクリックすると、『生きているときには宝石とまではいかないが』、『赤く輝いて見える』とぼうずコンニャク氏が言っておられる通り、きらびやかな星状の斑紋が見られる。

「かげきよ」頼朝の命を狙った平家に仕えた藤原悪七兵衛景清。平家の「赤」に因むのであろう。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」では、『藤原景清』『をモデルにした歌舞伎『景清』の衣装の色合いからではないかと思われる』とされる。しかし、漁師らが綽名するのにわざわざ歌舞伎の「景清」を由来とするのは、ちょっと留保したい気がする。

「紀州日高郡網代浦」現在の和歌山県由良町(ゆらちょう)網代(グーグル・マップ・データ。以下無指示は同じ)

「紀州在田郡湯淺浦」和歌山県有田郡湯浅町(ゆあさちょう)。

「さけなひ」赤いとこから「酒」か。「なひ」は不詳。「な」はしばしば「魚」の意で用いられるが。

「せうぜう」これはもう、「猩々」で「赤」絡みだ。

「めじろだひ」ホウセキキントキは黒目の周囲に勘定の色の薄い環がある。

「伊豫西條」愛媛県西条市

「めいち」大きな目が一番に目立つからか。

「讚州高松領津田浦」徳島県徳島市旧名東郡地区の津田浦。この附近か。

「じういを」不詳。

「むまぬすと」私の場合、「馬盗人」から連想する「赤」は「厩神」の猿の「赤」だった。

「筑前姪ノ浜」福岡県福岡市西区姪の浜

「土佐浦戶」高知県高知市浦戸。坂本龍馬像があることで知られる。

「勢州阿曾浦」三重県度会郡南伊勢町(ちょう)阿曽浦(あそうら)

「熊野大島」和歌山県東牟婁郡串本町にある紀伊大島

「べんけい」思うに、これは色ではなく、「弁慶の七つ道具」あるまいか? 但し、それはホウセキキントキには相応しくなく、別候補で挙げたクルマダイ辺りが、背鰭・腹鰭・尻鰭が、トッゲトゲ! でマッチする気がする。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページをご覧な!

「勢州慥柄浦」三重県度会(わたらい)郡南伊勢町(ちょう)慥柄浦(たしからうら)

「うみご」不詳。

「あかめばち」「めばち」はメバルのことであろう。

「熊野天口浦」不詳。

「臺灣縣志」清の陳文達撰になる台湾地誌。一七二〇年(康煕五十九年/本邦は享保五年)刊。

「塗硃」「硃」鉱石の一種である「辰砂」(しんしゃ)=「丹砂」のこと。赤色の顔料として用いられる。それを塗りつけたようなものの意。]

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