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2023/10/28

「博物誌」ルナアル作・岸田國士譯(正規表現版・ボナール挿絵+オリジナル新補注+原文) 「家鴨」

[やぶちゃん注:本電子化はサイトの「心朽窩新館」で偏愛する『ジュール・ルナール「博物誌」岸田国士訳(附 Jules Renard “ Histoires Naturelles ”原文+やぶちゃん補注版)』を公開している(新字新仮名戦後版)が、今回は国立国会図書館デジタルコレクションの正字正仮名のもの、戦前の岸田國士譯ジュウル・ルナアル 「博物誌」(昭一四(一九三九)年白水社刊)の画像(リンク先は当該書の標題附き扉二)を視認出来るようになったことから、それをブログ版として、新規まき直しで、零から始めることとしたものである。詳しくは初回の冒頭注を参照されたい。

 また、ボナールの画像に就いては、十六年前のそれではなく、再度、新潮文庫版のそれを、新たにOCRで読み込み、補正・清拭して用いる。注も一からやり直すこととし、原文は前回のものを調べたところ、アクサンテギュの落ちが有意に認められたので(サイト版は敢えてそのままにしておいた)、新たにフランスのサイト“TEXTES LIBRES”の電子化された同書原文のものをコピー・ペーストさせて戴くこととすることとした。

 

 

   家 鴨

 

Ahiru1

 

 まづ雌の家鴨が先に立つて、兩脚でびつこを引きながら、いつもの水溜りへ泥水を浴びに出かけて行く。

 雄の家鴨がそのあとを追ふ。翼(はね)の先を背中で組み合せたまま、これもやつぱり兩脚でびつこを引いてゐる。

 で、雌と雄の家鴨は、何か用件の場所へでも出かけて行くやうに、默々として步いて行く。

 最初まづ雌の方が、鳥の羽根や、鳥の糞(ふん)や、葡萄の葉や、藁屑などの浮んでゐる泥水の中へ、そのまま滑り込む。殆ど姿が見えなくなる。

 彼女は待つてゐる。もういつでもいい。

 そこで今度は雄が入つて行く。彼の豪奢な彩色は忽ち水の中に沈んでしまふ。もう綠色の頭と尻のところの可愛い卷毛が見えるだけだ。どちらもいい氣持でぢつとさうしてゐる。水でからだが溫まる。その水は誰も取り換へたりはしない。ただ暴風雨(あらし)の日にひとりでに新しくなるだけだ。

 雄はその平べつたい嘴で雌の頸を輕く嚙みながら締めつける。いつとき彼は頻りにからだを動かすが、水は重く澱んでゐて、殆ど漣も立たないくらゐだ。で、直ぐまた靜かになると、滑らかな水面には、澄み渡つた空の一隅が黑く映る。

 雌と雄の家鴨はもうちつとも動かない。太陽の下で茹(うだ)つて寢(ね)込んでしまふ。そばを通つても誰も氣がつかないくらゐだ。彼等が其處にゐることを知らせるのは何かと云へば、たまに水の泡(あぶく)が幾つか浮かび上がつて來て、澱んだ水面ではじけるだけである。

 

Ahiru2

 

[やぶちゃん注:鳥綱カモ目カモ科マガモ属品種アヒル Anas plathyrhynchos var. domestica 。]

 

 

CANARDS

 

C'est la cane qui va la première, boitant des deux pattes, barboter au trou qu'elle connaît.

Le canard la suit. Les pointes de ses ailes croisées sur le dos, il boite aussi des deux pattes.

Et cane et canard marchent taciturnes comme à un rendez-vous d'affaires.

La cane d'abord se laisse glisser dans l'eau boueuse où flottent des plumes, des fientes, une feuille de vigne, et de la paille. Elle a presque disparu.

Elle attend. Elle est prête.

Et le canard entre à son tour. Il noie ses riches couleurs. On ne voit que sa tête verte et l'accroche-coeur du derrière. Tous deux se trouvent bien là. L'eau chauffe. Jamais on ne la vide et elle ne se renouvelle que les jours d'orage.

Le canard, de son bec aplati, mordille et serre la nuque de la cane. Un instant il s'agite et l'eau est si épaisse qu'elle en frissonne à peine. Et vite calmée, plate, elle réfléchit, en noir, un coin de ciel pur.

La cane et le canard ne bougent plus. Le soleil les cuit et les endort. On passerait près d'eux sans les remarquer. Ils ne se dénoncent que par les rares bulles d'air qui viennent crever sur l'eau croupie.

 

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