明恵上人夢記 103
103
一、同八月三、四日、禪中の好相(がうさう)に、一(ひとり)の佛、有り。予に親近し、之を守護す。乳母(めのと)の如く思ふ。
[やぶちゃん注:これは夢の記載が順列ととるなら、承久二(一二二〇)年八月三日から四日までが時制となる。
「好相」「相好(さうがう(そうごう))」に同じい。仏の身体に備わっている三十二の相と八十種の特徴の総称。
「乳母」明恵の仏観には常に女性性(アニマ)が認められることが多いことは注視してよい。]
□やぶちゃん現代語訳
また、同年八月三日から四日にかけて、禅を修(しゅ)して観想している最中、真(まこと)の仏の相好が感得された際――
一人(ひとり)の仏(ほとけ)があられた。
私に親しく近づき、私を守護して下さった。
私は心に、
「私の亡き乳母(うば)さまのようだ!」
と思うのであった。