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2023/10/30

柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」 「金毘羅の馬」

[やぶちゃん注:本書は昭和三六(一九六一)年一月に東京堂から刊行された。この総題の「随筆辞典」はシリーズ物の一書。本書については、初回の冒頭注を、また、作者については、私の『柴田宵曲 始動 ~ 妖異博物館 「はしがき」・「化物振舞」』の私の冒頭注を参照されたい。

 底本は国立国会図書館デジタルコレクションのこちらを使用した。新字新仮名である。但し、加工データとして、所持する筑摩書房『ちくま文芸文庫』の「奇談異聞辞典」(底本を解題したもの・二〇〇八年刊)を加工データとして使用させて貰った。ここに御礼申し上げる。

 読みが振れる、若い読者が躓くかも知れぬ箇所には《 》で読みを添えた。引用文の場合は歴史的仮名遣を用いた。なお、( )は柴田自身が附したルビである。

 また、柴田のストイックな編集法を鑑み、私の注は、どうしても必要と判断したもののみとした。幸い、有意な部分は私が既に電子化注したものがあるので、それをリンクさせてもいる。但し、この原本は新字新仮名であるため、私が電子化していない引用文の原本に当たることが出来たものは、極力、視認出来るように、国立国会図書館デジタルコレクションや他のデータベースの当該部をリンクさせるように努めた。

 なお、辞典形式であるので、各項目を各個に電子化する。公開は基本、相互の項目に連関性がないものが多いので、一回一項或いは数項程度とする。

 

 金毘羅の馬【このぴらのうま】 〔閑田次筆巻四〕謝肇淛《しやてうせい》好名利は丈夫の事、好鬼神は婦女子の事、丈夫にして信鬼神は、丈夫の気をうしなふといへり。凡そ理学家はいふに及ばず、少し文字をよみ書を手ならす人は、神仏の妙を嘲りて、婦女子の口実とすることめづらしからず。然るにまさに予<伴蒿蹊>が視るところ、二十余年前、讃岐金毘羅<香川三豊郡内>にまうでし時、つねの神馬の外に、駒一疋馬屋の外につなぎたり。いかにとおもひしに、折から詣でし人かたらく、この近き某の村(所を聞きしかど遺忘す)に、馬の難産にて苦しめるを、そのあろじこの御社へ祈請し、平らかに産しめたまはゞ、その駒は奉るべしと誓ひしが、やがてやすく生れし後、いとよき駒なれば、惜しむ意出来て猶予せし間、この駒みづから走りて、このごろこゝに来れり。とみに置くべき屋なければ、かくのごとしといへり。これは正に見しこと故に挙ぐ。この外此御社また他にもいちじろきことゝて、聞く所あれども、皆これを略(はぶ)く。

[やぶちゃん注:「閑田次筆」「応声蟲」で既出既注。国立国会図書館デジタルコレクションの『日本隨筆全集』 第七巻(昭和二(一九二七)年国民図書刊)のこちら(左ページ後ろから四行目以降)で正規表現で視認出来る。直前に鷲に攫われて養育された人の話があり、それを受けて、冒頭に「鷲の因《ちなみ》に思ひ出たることあり」とあるのがカットされてある。

「謝肇淛」(しゃちょうせい 一五六四年?~?)は明末の文人。随筆家。福州長楽(福建省長楽県)の人。一五九二年に進士に及第し、湖州府推官・工部郎中となり、さらに雲南の地方官を経て、広西布政使に進んだ。地方官生活が長かったうえ、工部にあったときも治水のために現地に赴くことも多く、また、登山を好んだので、各地の地理に明るく、「滇略」(てんりゃく)・「北河紀」・「方巖志」などの地理書の著もある。詩・書・画にも長じていたが、特に有名なのは、随筆の「五雑俎」であり、その博聞をもととした歴史考証を含む随筆。全十六巻(天部二巻・地部二巻・人部四巻・物部四巻・事部四巻)。天・地・人・物・事の百般に亙って記録論述しており、日本でも広く読まれた。書名は元は古い楽府(がふ)題で、それに「各種の彩(いろどり)を以って布を織る」という自在な対象と考証の比喩の意を掛けた。主たる部分は筆者の読書の心得であるが、国事や歴史の考証も多く含む。一六一六年に刻本されたが、本文で、遼東の女真が、後日、明の災いになるであろう、という見解を記していたため、清代になって中国では閲覧が禁じられてしまい、中華民国になってやっと復刻されて一般に読まれるようになるという数奇な経緯を持つ。「好名利は丈夫の事、好鬼神は婦女子の事、丈夫にして信鬼神は、丈夫の気をうしなふ」は巻八の「人部四」の冒頭の以下。

   *

士人之好名利、與婦人女子之好鬼神、皆其天性使然、不能自克。故婦人而知好名者、女丈夫也。士人而信鬼神者、無丈夫氣者也。

   *

「理学者」宋代の性理学を信奉する儒者。性理学は、北宋の周敦頤(とんい)以来、程顥(ていこう)、その弟程頤、朱熹らが、天理と人性について論じた学問。偏った情によって変化する前の、人間の本然の性は、理そのものに合致するという立場から、人欲を去って天理に近づくことが人間の課題であると説くもの。

「讃岐金毘羅」「香川三豊郡内」金毘羅宮(グーグル・マップ・データ)は現在は香川県仲多度郡琴平町内である。]

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