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2023/10/22

柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」 「毛降る」

[やぶちゃん注:本書は昭和三六(一九六一)年一月に東京堂から刊行された。この総題の「随筆辞典」はシリーズ物の一書。本書については、初回の冒頭注を、また、作者については、私の『柴田宵曲 始動 ~ 妖異博物館 「はしがき」・「化物振舞」』の私の冒頭注を参照されたい。

 底本は国立国会図書館デジタルコレクションのこちらを使用した。新字新仮名である。但し、加工データとして、所持する筑摩書房『ちくま文芸文庫』の「奇談異聞辞典」(底本を解題したもの・二〇〇八年刊)を加工データとして使用させて貰った。ここに御礼申し上げる。

 読みが振れる、若い読者が躓くかも知れぬ箇所には《 》で読みを添えた。引用文の場合は歴史的仮名遣を用いた。なお、( )は柴田自身が附したルビである。

 また、柴田のストイックな編集法を鑑み、私の注は、どうしても必要と判断したもののみとした。幸い、有意な部分は私が既に電子化注したものがあるので、それをリンクさせてもいる。但し、この原本は新字新仮名であるため、私が電子化していない引用文の原本に当たることが出来たものは、極力、視認出来るように、国立国会図書館デジタルコレクションや他のデータベースの当該部をリンクさせるように努めた。

 なお、辞典形式であるので、各項目を各個に電子化する。公開は基本、相互の項目に連関性がないものが多いので、一回一項或いは数項程度とする。

 

 毛降る【けふる】 〔甲子夜話巻五十二〕八月十四日には風雨烈しく、処々に出水《でみづ》したり。後に聞けば毛を降らせしと云ふ。その状三四寸なるも有り、また短かきも有りしと人々語れり。予<松浦静山>〉怪かと問ひたれば、林氏云ふ、陰気の形を為したる者にて、獣毛には非ざるべしと。また後に『怪異辨断』(西川如見著)を披閲すれば、中華日本の南方に当りて無量の大国あり。その鳥空中を往来す。不ㇾ知豈《あに》妖ならんやと。然れば鳥毛の降れるなり。(前書を按ずるに、伝へ聞く、西南の蛮夷に大国甚だ多し。その国大鳥の羽毛畜獣の毛に似たる者多く有ㇾ之、未だ日本中華に於て無ㇾ之処の者也。その鳥数《す》千百群れ飛んで遠く山海を往来するに、如何なる故にや、その翼下の毳毛《ぜいまう》[やぶちゃん注:細かく柔らかい毛。]を落すことあり。その毛風気《ふうき》に乗じて遠く降《ふ》れるを雨毛《けをあめふらす》[やぶちゃん注:細かな雨を降らす。]と云へり)

[やぶちゃん注:事前に正規表現で「フライング単発 甲子夜話卷之五十二 15 毛を雨(あめふら)す」を電子化しておいた。必ず、そちらの私の注を見られたい。

 この後、底本では一行空けがある。]

 

 〔遊芸園随筆〕六月十九日夜、一頻り雨ふりたりしは深夜如ㇾ夢に覚えたり。同廿日退出より新家栄之助、飯田町<東京都新宿区内>もちの木坂へ転宅の賀として参りしに、所々に昨夜か暁かはしらず、毛ふりたりとて拾ひ得たるもの数根《すこん》をみする。長さ五六寸より六七寸にて、白くして黄を帯びたり。夫より帰り懸《がけ》、牛込北おかち丁<東京都新宿区内>へ参り候間、みちすがら家来に拾はせ候に、又数根を得たり。

[やぶちゃん注:「遊芸園随筆」川路聖謨(かわじとしあきら 享和元(一八〇一)年~慶応四(一八六八)年)の随筆。川路は幕末の勘定奉行。豊後の人。江戸小普請組川路光房の養子となり、後、幕府の勘定吟味役・佐渡奉行・普請奉行・大坂町奉行・勘定奉行・外国奉行などを歴任した。嘉永六(一八五三)年ロシア使節プチャーチンと交渉し、翌年、「日露和親条約」を結んだ。江戸開城の直前に自殺した。国立国会図書館デジタルコレクションの『日本隨筆大成』巻五(昭和二(一九二七)年日本随筆大成刊行会刊)のこちらで、正規表現で読める。但し、末尾の『よつてここに記し[やぶちゃん注:ママ。編者による『(すカ)』とする傍注がある。]。右の毛は則是也。』がカットされている

「六月十九日」前の記事が天保七(一八三六)年七月の記事であるから、同年であることが判る。旧暦六月十九日はグレゴリオ暦八月一日。

「もちの木坂」冬青木坂(もちのきざか)。ここ(グーグル・マップ・データ。以下、無指示は同じ)。

「牛込北おかち丁」北御徒町。現在の新宿区北町(きたまち)。]

〔塩尻拾遺巻廿二〕頃日また伊勢路の地に毛生ずと云ふ説あり。我熱田あたりにも馬の毛のごとき毛二三寸なるが生えけると、三月廿日宮なる漁人来りて語りし。毛降りしといふ事、唐《もろこそ》の書にあれども、地より生じけると云ふ事、いまだ見あたり侍らざるにや。愚按ずるに、去る十三日の午の刻<午前十二時>ばかり、暴風俄然として起り、大雨石を流し、雲乱れ飛ぶ事、秋の如し。その間《かん》雷のごとく閃きてやがて静かになり侍りし。光り物通りしなど云ひさわぎし。例の一目連などいふ暴気にや。いつとても光り物流れ飛びし頃は、毛ある事めづらしからず。散気《さんき》変じてこの物を為し侍るにこそ。もろこし毛降りしといふはこれならん。今度《このたび》も散り落ちし上へ、雨砂古(いさご)<すな>を流しかけしを後《のち》見て、地より生ぜしといふかと覚ゆ。我家庭にも尋ね見しかば、毛の数《す》寸なるが多くありし。 [やぶちゃん注:字空けはママ。](元亀元年二月十日、大雨の後白毛地にあり、長さ四五寸なりし由、或る記にしるせり)

[やぶちゃん注:「塩尻拾遺」「鼬の火柱」で既出既注この正字版は見当たらない。仕方がないので、国立国会図書館デジタルコレクションの『名古屋叢書』第十八巻の新字旧仮名版の当該部をリンクさせておく。

「宮」「宮の渡し」のこと。

「元亀元年二月十日」ユリウス暦一五七一年三月七日。グレゴリオ暦換算で三月十五日。]

〔北窻瑣談巻二〕寛政丑年<八年>七月十五日、江戸小雨降りて、その中に毛を降らせり。丸の内<東京都千代田区内>辺《へん》は別して多かりしとぞ。多くは色白く長サ五六寸、殊に長きは一尺二三寸もあり。色赤きもたまたま有りしとぞ。京ヘも親しき人より、拾ひとりし毛を送り越《こ》せしが、馬の毛のふとさの毛なり。江戸中にあまねく降りし事、何獣の毛にて幾万疋の毛なりや。いと不審の事なりき。

[やぶちゃん注:「北窻瑣談」は「網に掛った銘刀」で既出既注。国立国会図書館デジタルコレクションの『日本隨筆全集』第四巻(昭和二(一九二七)年国民図書刊)のこちらで当該箇所が視認出来る(左ページ)。

「寛政丑年」「八年」「七月十五日」宵曲は換算を間違ってしまっている。「寛政の丑年」寛政五年である。グレゴリオ暦一七九三年八月二十一日。

「馬の毛のふとさの毛なり」上記原文では『馬の尾のふとさの毛なり』である。宵曲の誤字か、或いは誤植であろう。]

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