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2023/11/07

「博物誌」ルナアル作・岸田國士譯(正規表現版・ボナール挿絵+オリジナル新補注+原文) 「羊」

 

[やぶちゃん注:本電子化はサイトの「心朽窩新館」で偏愛する『ジュール・ルナール「博物誌」岸田国士訳(附 Jules Renard “ Histoires Naturelles ”原文+やぶちゃん補注版)』を公開している(新字新仮名戦後版)が、今回は国立国会図書館デジタルコレクションの正字正仮名のもの、戦前の岸田國士譯ジュウル・ルナアル 「博物誌」(昭一四(一九三九)年白水社刊)の画像(リンク先は当該書の標題附き扉二)を視認出来るようになったことから、それをブログ版として、新規まき直しで、零から始めることとしたものである。詳しくは初回の冒頭注を参照されたい。

 また、ボナールの画像に就いては、十六年前のそれではなく、再度、新潮文庫版のそれを、新たにOCRで読み込み、補正・清拭して用いる。注も一からやり直すこととし、原文は前回のものを調べたところ、アクサンテギュの落ちが有意に認められたので(サイト版は敢えてそのままにしておいた)、新たにフランスのサイト“TEXTES LIBRES”の電子化された同書原文のものをコピー・ペーストさせて戴くこととすることとした。

 

 

    

 

 

 彼等はれんげ畑から歸つて來る。今朝から、そこで、からだの影に鼻をくつつけて草を喰つてゐたのである。

 不精な羊飼の合圖で、お決りの犬が、羊のむれをそつちと思ふ方から追ひ立てる。

 そのむれは、道をいつぱいに占領し、溝から溝へ波を打ち、溢れ出る。或る時はまた、密集して一體となり、ぶよつき、老婆のやうな小刻みな足どりで、地べたを踏みならす。それが駈け出し始めると、その無數の脚が蘆の葉のやうな音を立て、道の上の埃は蜂の巢をつついたやうに舞ひ上る。

 こつちの方では、縮れ毛の、たつぷり毛のついた羊が、丸い荷物の包みを空中に投げ上げたやうに跳び上る。すると、その漏斗型の耳から練香(ねりかう)が轉げ落ちる。

 向ふでは、別のやつが眩暈(めまひ)を起して、坐りの惡い頭に膝をぶつつける。

 彼等は村に侵入する。恰も、今日が彼らのお祭りといふ風である。で、騷ぎ犇めいて、街(まち)なかを嬉しさうに啼き廻つてゐるやうだ。

 然し、彼等は村で止つてしまふのではない。見てゐると、遙か向ふに、また彼等の姿が現れる。彼等は遠く地平線に辿りつく。丘を攀ぢながら、輕やかに、太陽の方へ登つて行く。彼等は太陽に近づき、少し離れて寢る。

 遲れた連中は、空に、思ひがけない最後の姿を描き、それから、絲毬(いとだま)のやうに丸く寄り合つた群れのなかに一緖になつてしまうふ。

 一房の羊毛がまた群れを離れたと思ふと、白い泡となつて空を翔(かけ)りながら、やがて煙となり、蒸氣となり、遂になんにもなくなつてしまふ。

 もう脚が一本外に出てゐるだけだ。

 その脚は長く伸び、紡錘(つむ)のやうに次第に細くなりながら、何處までも續いてゐる。

 寒がりの羊どもは、太陽のまはりに眠る。太陽は大儀さうに冠を脫ぐと、明日まで、その後光を彼らの毛綿の中に突き刺しておくのである。

 

 

 

Hituji

 

 

 

 羊たち――「しかし(メエ)……しかし(メエ)……しかし(メエ)」

 牧犬――「然し(メエ)も糞もねえ!」

 

[やぶちゃん注:前篇と短い後篇の間の五行空けはママである。ここではそこにボナールの絵を配した。哺乳綱鯨偶蹄目ウシ亜目ウシ科ヤギ亜科ヒツジ属ヒツジ Ovis aries と、「れんげ畑」で双子葉植物綱マメ目マメ科マメ亜科ゲンゲ属ゲンゲ Astragalus sinicus と、哺乳綱食肉目イヌ科イヌ属オオカミ亜種イヌ Canis lupus familiaris 。但し、「れんげ畑」に相当するのは、“chaumes”で、これは単に「麦などの農作物を刈り取った刈り株畑」で、「れんげ畑」という訳が穏当であるかどうかは疑問がある。寧ろ、ゲンゲも含むが、多種の雑草類をイメージした方が正しい。

 比喩であるが、「蘆」で単子葉植物綱イネ目イネ科ダンチク(葮竹・暖竹)亜科ヨシ(蘆・葭)属ヨシ Phragmites australis 。「道の上の埃は蜂の巢をつついたやうに舞ひ上る」の「蜂の巢」は明らかに蜂養箱の中の整然としたそれであるから蜜蜂で、昆虫綱膜翅(ハチ)目細腰(ハチ)亜目ミツバチ上科ミツバチ科ミツバチ亜科ミツバチ族ミツバチ属セイヨウミツバチ Apis mellifera

「練香(ねりかう)」耳糞。

「もう脚が一本外に出てゐるだけだ」さらに遅れた羊の群れの換喩。

「紡錘(つむ)」糸巻などの心棒。或いは、糸をつむぐ機械の部品。鉄製の細い棒で、これを管に差し込んで回転させ、糸を巻くと同時によりをかける用をするもの。ここは太陽光の温みを、それに喩えて羊たちの体にそれを刺し添えたという換喩・寓喩である。また、ルナールの一九〇一年五月十三日の日記(一九七七年臨川書店刊・同全集第十三巻・打田・柏木・北村・小谷・松田共訳)に、『雲を突き抜ける太陽光は、毛糸に刺さる針のようだ。』とある(第五巻の佃裕文訳「博物誌」の後注で探した)。

「しかし(メエ)」辻昶訳一九九八年岩波文庫刊「博物誌」で注されている通り、『「メ(ー)」というのは、フランス語で「だけど」という意味』を掛けている。接続詞で綴りは、“mais”、発音は「メ」。]

  

 

 

 

LES MOUTONS

 

Ils reviennent des chaumes, où, depuis ce matin, ils paissaient, le nez à l'ombre de leur corps.

Selon les signes d'un berger indolent, le chien nécessaire attaque la bande du côté qu'il faut.

Elle tient toute la route, ondule d'un fossé à l'autre et déborde, ou tassée, unie, moelleuse, piétine le sol, à petits pas de vieilles femmes. Quand elle se met à courir, les pattes font le bruit des roseaux et criblent la poussière du chemin de nids-d'abeilles.

Ce mouton frisé, bien garni, saute comme un ballot jeté en l'air, et du cornet de son oreille s'échappent des pastilles.

Cet autre a le vertige et heurte du genou sa tête mal vissée.

Ils envahissent le village. On dirait que c'est aujourd'hui leur fête et qu'avec pétulance, ils bêlent de joie par les rues.

Mais ils ne s'arrêtent pas au village, et je les vois reparaître, là-bas. Ils gagnent l'horizon. Par le coteau, ils montent, légers, vers le soleil. Ils s'en approchent et se couchent à distance.

Des traînards prennent, sur le ciel, une dernière forme imprévue, et rejoignent la troupe pelotonnée.

Un flocon se détache encore et plane, mousse blanche, puis fumée, vapeur, puis rien.

Il ne reste plus qu'une patte dehors.

Elle s'allonge, elle s'effile comme une quenouille, à l'infini.

Les moutons frileux s'endorment autour du soleil las qui défait sa couronne et pique, jusqu'à demain, ses rayons dans leur laine.

LES MOUTONS. - Mée... Mée... Mée...

LE CHIEN DE BERGER. - Il n'y a pas de mais

 

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