「博物誌」ルナアル作・岸田國士譯(正規表現版・ボナール挿絵+オリジナル新補注+原文) 「猫」
[やぶちゃん注:本電子化はサイトの「心朽窩新館」で偏愛する『ジュール・ルナール「博物誌」岸田国士訳(附 Jules Renard “ Histoires Naturelles ”原文+やぶちゃん補注版)』を公開している(新字新仮名戦後版)が、今回は国立国会図書館デジタルコレクションの正字正仮名のもの、戦前の岸田國士譯ジュウル・ルナアル 「博物誌」(昭一四(一九三九)年白水社刊)の画像(リンク先は当該書の標題附き扉二)を視認出来るようになったことから、それをブログ版として、新規まき直しで、零から始めることとしたものである。詳しくは初回の冒頭注を参照されたい。
また、ボナールの画像に就いては、十六年前のそれではなく、再度、新潮文庫版のそれを、新たにOCRで読み込み、補正・清拭して用いる。注も一からやり直すこととし、原文は前回のものを調べたところ、アクサンテギュの落ちが有意に認められたので(サイト版は敢えてそのままにしておいた)、新たにフランスのサイト“TEXTES LIBRES”の電子化された同書原文のものをコピー・ペーストさせて戴くこととすることとした。]
猫
私のは鼠を喰はない。そんなことをするのがいやなのだ。つかまへても、それを玩具にするだけである。
遊び飽きると、命だけは助けてやる。それから何處かへ行つて、尻尾(しつぽ)で輪を作つてその中に坐り、拳固のやうに恰好よく引き緊まつた頭で、餘念なく夢想に耽る。
しかし、爪傷(つめきず)がもとで、鼠は死んでしまふ。
[やぶちゃん注:哺乳綱食肉目ネコ亜目ネコ科ネコ属ネコ亜属ヨーロッパヤマネコ亜種イエネコ Felis silvestris catus 、及び、哺乳綱齧歯(ネズミ)目ネズミ亜目ネズミ上科ネズミ科 Muridae のネズミ類。人家や、その周辺に棲息する「家ネズミ」類のヨーロッパでの(日本も変わらない)代表種は、クマネズミ属ドブネズミ Rattus norvegicus である。恐らく、本篇とボナールの挿絵は、「博物誌」でも最も知られるアフォリズムと挿絵の一つである。但し、本篇は二年先行する『ジュウル・ルナアル「ぶどう畑のぶどう作り」附 やぶちゃん補注』の中に同題の同じものがある。
「玩具」戦後版も「ぶどう畑のぶどう作り」も共に『おもちゃ』のルビを附す。]
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LE CHAT
Le mien ne mange pas les souris ; il n'aime pas ça.
Il n'en attrape que pour jouer avec. Quand il a bien joué, il lui fait grâce de la vie, et il va rêver ailleurs, l'innocent, assis dans la boucle de sa queue, la tête bien fermée comme un poing.
Mais à cause des griffes, la souris est morte.
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