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2023/11/27

柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」 「狸と中間」

[やぶちゃん注:本書は昭和三六(一九六一)年一月に東京堂から刊行された。この総題の「随筆辞典」はシリーズ物の一書。本書については、初回の冒頭注を、また、作者については、私の『柴田宵曲 始動 ~ 妖異博物館 「はしがき」・「化物振舞」』の私の冒頭注を参照されたい。

 底本は国立国会図書館デジタルコレクションのこちらを使用した。新字新仮名である。但し、加工データとして、所持する筑摩書房『ちくま文芸文庫』の「奇談異聞辞典」(底本を解題したもの・二〇〇八年刊)を加工データとして使用させて貰った。ここに御礼申し上げる。

 読みが振れる、若い読者が躓くかも知れぬ箇所には《 》で読みを添えた。引用文の場合は歴史的仮名遣を用いた。なお、( )は柴田自身が附したルビである。

 また、柴田のストイックな編集法を鑑み、私の注は、どうしても必要と判断したもののみとした。幸い、有意な部分は私が既に電子化注したものがあるので、それをリンクさせてもいる。但し、この原本は新字新仮名であるため、私が電子化していない引用文の原本に当たることが出来たものは、極力、視認出来るように、国立国会図書館デジタルコレクションや他のデータベースの当該部をリンクさせるように努めた。

 なお、辞典形式であるので、各項目を各個に電子化する。公開は基本、相互の項目に連関性がないものが多いので、一回一項或いは数項程度とする。

 

 狸と中間【たぬきとちゅうげん】 〔梅翁随筆巻二〕明和九年目黒行人坂《ぎやうにんざか》の火事とて、江戸中大半焼失せし大火事あり。その夜牛込若宮八幡宮の脇に住《すまひ》す加藤又兵衛が中間、市谷左内坂《さないざか》を通りしに、きれいなる女泣き居たるに逢ひけり。様子を尋ぬるに、焼出され行くべきかたもなしといふ。しからば我かたへ来り一夜を明かし、しれる人の行衛を尋ね給ふべしといふ。やすらかに得心してつれ立ち来りけり。ひとり男のことなれば、さし障る心遣ひなしと、中間心に大いに悦び、ともなひて部屋に入り、囲炉裏の火を沢山にさしくべて、こゝろ及ぶだけ馳走しけるが、覚えず少し居眠り目覚《めさま》しみれば、彼女も居眠りゐたりしが、目もとに長き毛の見ゆる如くなりしゆゑ、目をうちひらききつと見れば、いつか古狸となれり。大睾丸《おほきんたま》を広げて火にあぶり居《ゐ》るゆゑ、己れ狸めよく化《ばか》したり、打殺して汁の実にせんと打ちかゝれば、狸初めて驚き、窓より飛出で逃去りたりとかや。

[やぶちゃん注:「梅翁随筆」は前回分を含めて既に複数回既出。著者不詳。寛政(一七八九年~一八〇一年)年間の見聞巷談を集めた随筆。国立国会図書館デジタルコレクションの『日本隨筆大成』第二期第六巻(昭和三(一九二八)年日本随筆大成刊行会刊)のこちらで正字表現のものが見られる(二行目下方から)。但し、これは標題『○妖怪物語幷夜女に化』(ばけ)『し事』(前ページ開始)の後半部分を抄出したもの。最後の一文の『又兵衞今はやしき替』(がへ)『して一色聞多』(いつしきぶんた)『の屋敷と成る。』もカットされている。これは、幸い、「柴田宵曲 妖異博物館 異形の顏」の最後の私の注で、正規表現で同条全部を電子化しているので、見られたい。

「明和九年目黒行人坂の火事とて、江戸中大半焼失せし大火事あり」「明暦の大火」・「文化の大火」とともに「江戸三大大火」の一つとされる、「明和の大火」或いは「目黒行人坂大火」とも呼ばれる、明和九年二月二十九日(一七七二年四月一日)に目黒行人坂にある大圓寺(グーグル・マップ・データ。以下同じ)から出火したが、武州熊谷無宿の真秀という坊主が盗みのために庫裡に放火したことによる火付けであった。真秀は同年四月頃に捕縛、同年六月二十一日、市中引き回しの上、小塚原で火刑に処された。

「牛込若宮八幡宮」現在の神楽坂若宮八幡宮

「市谷左内坂」東京都新宿区市谷左内町(いちがやさないちょう)のここ。]

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