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2023/11/29

譚海 卷之五 和州初瀨の僧辨財天に値遇せし事

[やぶちゃん注:句読点・記号・読みを変更・追加した。「値遇」は「ちぐ」或いは「ちぐう」で、仏教では、「仏縁あるものにめぐりあうこと」の意で用いる。本篇は、頗る厭な展開を示すので、注意されたい。]

 

○和州長谷[やぶちゃん注:底本の編者傍注に『(初瀨)』とある。]の僧何某、勤修、多年に及(および)けるが、寺中に辨才天の木像を安置せる所有(あり)、時々、參りて、法施(ほふせ)奉り拜み奉りけるに、辨天女の形、殊に端麗に覺えて、いつとなく、なつかしく、忘れがたければ、しきりに參りて拜みまゐらするまゝ、おほけなく戀慕(れんぼ)の心、おこりて、『いかにもして、世中(よのなか)にかゝる女(をんな)あらば、一期(いちご)の思ひ出に逢見(あひみ)てまし。』など、あらぬ事に、心、移りて、破戒の事も思はず、今は、つやつや、物も覺えず、病(やまひ)にふして、あかしくらしけり。おもふあまりの心を、天女も、あはれみたまひけるにや、ある夜、うつゝの如く、辨財天、此僧にまみへ給ひて、「汝がよしなき心を起して、年頃の勤行(ごんぎやう)、いたづらにせん事、淺間敷(あさましき)おもふ儘(まま)、かく現じ來りたり。此事、かまへて、人にかたるな。」と、いたく口堅(くちがた)めましまして、天女、僧のふすまに入給ひぬ。僧、よろこびにたへず、夫婦(めをと)のかたらひを、なしつ。かくて、心も、のどまり[やぶちゃん注:「和(のど)まる」。落ち着き。]、病も、又、怠(おこた)り[やぶちゃん注:ここは「病気が癒える」というポジティヴな意。]ぬれば、勤修(ごんしゆ)、ますます、たゆみなく、はげみける。夫(それ)より後は、夜な夜な、天女、ましまして、僧と語(かたり)給ふ事、絕(たえ)ず。月目を經て、この僧、心にうれしく思ふ餘り、ふと、同法(どうほふ)のしたしき物語の序(ついで)に、「かゝる事も、ありける。」と、ほのめかしける其夜、又、天女、おはして、殊にいかり腹立(はらだち)給ひて、「汝がまよひをはらして、成佛(じやうぶつ)の緣をとげしめんためにこそ、かりそめに、かく、契(ちぎり)は、かはしつるを、はかなくも、人にもらしつる。今は、かひなし。汝がもらす所の慾水、かへしあたふるぞ。」とて、つまはぢきして去(さり)給ふ。其時、あまた、水の面(おもて)にかくると覺しが、やがて、此僧、らいびやうを、やみて、いく程もなく、身まかりぬ、と、いへり。ふしぎの事にこそ。

[やぶちゃん注:「和州長谷」「(初瀨)」現在の奈良県桜井市初瀬(はせ:グーグル・マップ・データ)。ここには知られた名刹長谷寺があるが、話しが話しなだけに、編者は、津村は地名を用いたのであろうから、「目次」の標題通り、「初瀨」とすべきだ、と考えたものと思われる。

「慾水」精液。

「らいびやう」「癩病」。ハンセン病の旧差別病名。私は何度も、繰り返し、近代以前、激しく差別されたこ病気について、詳細に注し、今も、その差別の亡霊が未だにいることを注意喚起してきた。たとえば、最近のそれの一つとして、『鈴木正三「因果物語」(片仮名本(義雲・雲歩撰)底本・饗庭篁村校訂版) 中卷「三 起請文の罰の事」』の私の注を必ず読まれたい。

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