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2023/11/07

フライング単発 甲子夜話卷五十二 14 同院に味噌をすること成らず

[やぶちゃん注:現在、作業中である柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」のために必要となったので、フライングして電子化する。句読点の変更・追加と、読み・記号・改行・段落を加えた。標題の「同院」は前の「仙波北院鐸(レイ)を禁ず」を受ける。たまたまそれは、やはり「フライング単発 甲子夜話卷之五十二 13 仙波喜多院鐸を禁ず / 甲子夜話卷之五十三 2 喜多院禁鐸【再起】」の前者としてフライング公開しているので見られたい。後注はいらないと判断した。]

 

52―14

 また、永祿の頃[やぶちゃん注:一五五八年から一五七〇年まで。戦国前期。]とか、喜多院の住持、天狗となりて、妙義山中の嶽《なかのだけ》と云(いふ)に飛去(とびさ)りたりとぞ。

「因(よつ)て、住職代々の墓の中に、この住持の墓ばかりは、無し。」

と、なり。

 また、この住持の使ひし小僧も天狗となり、飛立(とびたち)しが、庭前に墜ちて、死す。故に、その處に、今、小祠(しやうし)を建てあり。

 この小僧、飛去る前に、味噌を搨(す)りゐたるが、摺(すり)こ木(ぎ)を擲捨(なげすて)て飛びたり、とぞ。

 その故か、今に、この院内にて、味噌を搨れば、必ず、物、有(あり)て、摺こ木を、取去る、と。

 因て、味噌を搨(する)ことならざれば、槌(つち)にて打(うつ)て汁にするとぞ。

 是も亦、如何なる者の、斯くは爲(す)る乎(か)。

■やぶちゃんの呟き

「妙義山中の嶽」これは群馬県の妙義山の南南西直近にある「中之嶽神社」(なかのだけじんじゃ)のことであろう(グーグル・マップ・データ)。公式サイトをリンクしておく。

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