「博物誌」ルナアル作・岸田國士譯(正規表現版・ボナール挿絵+オリジナル新補注+原文) 「蜻蛉」
[やぶちゃん注:本電子化はサイトの「心朽窩新館」で偏愛する『ジュール・ルナール「博物誌」岸田国士訳(附 Jules Renard “ Histoires Naturelles ”原文+やぶちゃん補注版)』を公開している(新字新仮名戦後版)が、今回は国立国会図書館デジタルコレクションの正字正仮名のもの、戦前の岸田國士譯ジュウル・ルナアル 「博物誌」(昭一四(一九三九)年白水社刊)の画像(リンク先は当該書の標題附き扉二)を視認出来るようになったことから、それをブログ版として、新規まき直しで、零から始めることとしたものである。詳しくは初回の冒頭注を参照されたい。
また、ボナールの画像に就いては、十六年前のそれではなく、再度、新潮文庫版のそれを、新たにOCRで読み込み、補正・清拭して用いる。注も一からやり直すこととし、原文は前回のものを調べたところ、アクサンテギュの落ちが有意に認められたので(サイト版は敢えてそのままにしておいた)、新たにフランスのサイト“TEXTES LIBRES”の電子化された同書原文のものをコピー・ペーストさせて戴くこととすることとした。]
蜻 蛉(とんぼ)
彼女は眼病の養生をしてゐる。
川べりを、あつちの岸へ行つたり、こつちの岸へ來たり、そして腫(は)れ上がつた眼を水で冷やしてばかりゐる。
じいじい音を立てて、まるで電氣仕掛けで飛んでゐるやうだ。
[やぶちゃん注:本文とボナールの絵から、昆虫綱蜻蛉(トンボ)目不均翅亜目トンボ下目 Epiprocta まで絞ってよいだろう。何故か知らんが、私は小学生の高学年の時、図書室でこれを読み、何故か、すっかり気に入ってしまい、秋、独りで、田圃の畦道を歩きつつ、実際の蜻蛉らを眺めながら、声に出して暗誦していたのを思い出すのである。]
*
LA DEMOISELLE
Elle soigne son ophtalmie.
D'un bord à l'autre de la rivière, elle ne fait que tremper dans l'eau fraîche ses yeux gonflés.
Et elle grésille, comme si elle volait à l'électricité.
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