譚海 卷之八 上總國大久保に樹の化物出る事(フライング公開)
[やぶちゃん注:現在、作業中である柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」のために必要となったので、フライングして電子化する。特異的に句読点・記号の変更・追加と、読みを加え、段落も成形した。「□」は欠字。]
上總國大久保と云(いふ)所には、樹の化物、出(いづ)るなり。
山のすそのにて、かたそばは、田につゞきたる道のほとりに、大木、あまた生ひて有り。
此道を、深夜に、人、過(すぐ)る時、大(おほき)なる木、いくらともなく、道に、橫たはりふして、一向、通りがたき事、每年、有り。
是に行きあふ人は、いつも心得て、跡へ、しりぞき、しばらく有(あり)て、ゆく時は、先の木ども、皆々、うせて、常の道の如く成(なり)て、往還に、さはる事、なし。
「木の倒れふしたる時、無理に、こえ過ぎんとすれば、必(かならず)、あしき事、有(あり)。」
と、いひ傳へたり。又、同國□□といふ所にも、あやしき事ありて、夜行(やかう)には、時々、人の、なげらるゝ事、あり。狐狸の所爲にや、こゝろえぬ事なり。
[やぶちゃん注:「上總國大久保」現在の千葉県市原市大久保(グーグル・マップ・データ)。ほぼ房総半島の真ん中である。]
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