「博物誌」ルナアル作・岸田國士譯(正規表現版・ボナール挿絵+オリジナル新補注+原文) 「あぶら蟲」
[やぶちゃん注:本電子化はサイトの「心朽窩新館」で偏愛する『ジュール・ルナール「博物誌」岸田国士訳(附 Jules Renard “ Histoires Naturelles ”原文+やぶちゃん補注版)』を公開している(新字新仮名戦後版)が、今回は国立国会図書館デジタルコレクションの正字正仮名のもの、戦前の岸田國士譯ジュウル・ルナアル 「博物誌」(昭一四(一九三九)年白水社刊)の画像(リンク先は当該書の標題附き扉二)を視認出来るようになったことから、それをブログ版として、新規まき直しで、零から始めることとしたものである。詳しくは初回の冒頭注を参照されたい。
また、ボナールの画像に就いては、十六年前のそれではなく、再度、新潮文庫版のそれを、新たにOCRで読み込み、補正・清拭して用いる。注も一からやり直すこととし、原文は前回のものを調べたところ、アクサンテギュの落ちが有意に認められたので(サイト版は敢えてそのままにしておいた)、新たにフランスのサイト“TEXTES LIBRES”の電子化された同書原文のものをコピー・ペーストさせて戴くこととすることとした。]
あぶら蟲
鍵穴のやうに、黑く、ぺしやんこだ。
[やぶちゃん注:節足動物門昆虫綱網翅(ゴキブリ)目 Blattodea のオオゴキブリ上科 Blaberoidea ・ゴキブリ上科 Blattoidea のゴキブリ(アブラムシ)類。当該ウィキによれば、『ゴキブリは全世界に約』四千『種いると言われ、うち日本には』九科二十五属五十種『余りが記録される』。二〇一四年の学術的記載によれば、『約』四千六百『種が記録されている』。『世界に生息するゴキブリの総数は熱帯と亜熱帯の森林を中心に』一兆四千八百五十三億『匹といわれており、日本には』二百三十六『億匹が生息するものと推定されている』。『特に熱帯・亜熱帯域に多いが、世界中に広く分布し、人の手を介して拡散されることも少なくない』とあり、『定説では、ゴキブリが出現したのは、今から約』三『億年前の古生代石炭紀で、「生きている化石」とも言われてきた』、『しかし後の研究では約』二『億』六千『万年前にゴキブリ目とカマキリ目が分岐し、現生ゴキブリ目は約』二『億年前のペルム紀に出現し、その後白亜紀』(一億五千万年~六千六百万年前)『に現在の科が出揃ったことが分かっている』とある。但し、ネットのQ&Aサイトの『フランスやドイツは日本に比べて家住性のゴキブリは少ないですか? 夏に普通に生活していてゴキブリを見つけてしまうということはなかなかありませんか?』という質問に対して、]『ベストアンサー』とされた回答には、『ドイツとフランスの中部以北ではまず見ることはありません(中華系の飲食店の厨房などでごくたまにいるという話を聞いたことがあります。北海道も同じです)』。『ただフランスは、地中海沿岸は温暖なのでゴキブリはいます。特にアフリカの移民が多いせいか、アフリカ原産の巨大なゴキブリの話をよく聞きます。移民の方々は衛生状態も良くないところに住んでいることが多いのと、物資の行き来が多いので、船や荷物に紛れて入り込むのだと思います』とあった。ルナールは拠点としたパリ以外では、概ねフランス中部より有意に南には長期滞在はしていないので、巨大なオオゴキブリの類を見ることは少なかったであろうという推定は可能であろうから、概ね、サイズは我々日本人の見るサイズとしてよいように思われる。なお、ボナールの挿絵はない。まあ、個人的には見たくはない。なお、本篇は、二年先行する『ジュウル・ルナアル「ぶどう畑のぶどう作り」附 やぶちゃん補注』の中に同題の同じものがある。但し、岸田氏の戦後の訳では、標題が『蜚虫(あぶらむし)』という表記になっている。]
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LE CAFARD
Noir et collé comme un trou de serrure.
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