「博物誌」ルナアル作・岸田國士譯(正規表現版・ボナール挿絵+オリジナル新補注+原文) 「かはせみ」
[やぶちゃん注:本電子化はサイトの「心朽窩新館」で偏愛する『ジュール・ルナール「博物誌」岸田国士訳(附 Jules Renard “ Histoires Naturelles ”原文+やぶちゃん補注版)』を公開している(新字新仮名戦後版)が、今回は国立国会図書館デジタルコレクションの正字正仮名のもの、戦前の岸田國士譯ジュウル・ルナアル 「博物誌」(昭一四(一九三九)年白水社刊)の画像(リンク先は当該書の標題附き扉二)を視認出来るようになったことから、それをブログ版として、新規まき直しで、零から始めることとしたものである。詳しくは初回の冒頭注を参照されたい。
また、ボナールの画像に就いては、十六年前のそれではなく、再度、新潮文庫版のそれを、新たにOCRで読み込み、補正・清拭して用いる。注も一からやり直すこととし、原文は前回のものを調べたところ、アクサンテギュの落ちが有意に認められたので(サイト版は敢えてそのままにしておいた)、新たにフランスのサイト“TEXTES LIBRES”の電子化された同書原文のものをコピー・ペーストさせて戴くこととすることとした。]
かはせみ
今日の夕方は、魚が一向かからなかつた。が、その代り、私は近來稀(まれ)な興奮を獲物にして歸つて來た。
私がぢつと釣竿を出してゐると、一羽の翡翠(かはせみ)が來てその上にとまつた。
これくらゐ派手な鳥はない。
それは、大きな靑い花が長い莖の先に咲いてゐるやうだつた。竿は重みでしなつた。私は、翡翠に樹と間違へられた、それが大いに得意で、息を殺した。
怖がつて飛んで行つたのでないことは請け合ひである。一本の枝から別の枝に跳び移るつもりでゐたに違ひない。
[やぶちゃん注:鳥綱ブッポウソウ目カワセミ科カワセミ亜科カワセミ属カワセミAlcedo atthis 。]
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LE MARTIN-PECHEUR
Ça n'a pas mordu, ce soir, mais je rapporte une rare émotion.
Comme je tenais ma perche de ligne tendue, un martin-pêcheur est venu s'y poser.
Nous n'avons pas d'oiseau plus éclatant.
Il semblait une grosse fleur bleue au bout d'une longue tige. La perche pliait sous le poids. Je ne respirais plus, tout fier d'être pris pour un arbre par un martin-pêcheur.
Et je suis sûr qu'il ne s'est pas envolé de peur, mais qu'il a cru qu'il ne faisait que passer d'une branche à une autre.
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