譚海 卷之五 武州安立郡赤山村慈林寺の事
[やぶちゃん注:句読点・記号・読みを変更・追加した。]
○武州安立郡[やぶちゃん注:底本では「安」の字に編者傍注で『足』とある。]赤山村に、慈林寺の藥師とて、厚き御堂(みだう)あり。聖武天皇開基、文德天皇さいこう[やぶちゃん注:「再興」。]と云(いひ)、額に、えりて有(あり)。並木・松など、年ふる寺にて、閑寂の地也。「傍(かたはら)の茂りたる小山に入(いる)人あれば、再び歸らず。」あるは、「『藥師の眷屬』とて「三足(みつあし)の雉子」、ある。」よしなど、「七不思議」と云(いふ)事をかぞへて、所の者はいひ傳ふる也。邊地には、珍しき精舍(しやうじや)也。
[やぶちゃん注:「武州安立郡」(「足」立郡)「赤山村」現在は、埼玉県川口市赤山(旧足立郡)ではなく、現行の地区の南東直近の埼玉県川口市安行慈林(あんぎょうじりん)にある真言宗智山派医王山宝厳院慈林寺(グーグル・マップ・データ航空写真)。同寺と同寺の会館の間に小山らしきものが見える。にしても、寺院でありながら、禁足地があり、そこに入ったら、行方不明となるという魔所があるというのは、これ、いただけないね。今の同寺にも迷惑だろ。]