柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」 「肉芝」
[やぶちゃん注:本書は昭和三六(一九六一)年一月に東京堂から刊行された。この総題の「随筆辞典」はシリーズ物の一書。本書については、初回の冒頭注を、また、作者については、私の『柴田宵曲 始動 ~ 妖異博物館 「はしがき」・「化物振舞」』の私の冒頭注を参照されたい。
底本は国立国会図書館デジタルコレクションのこちらを使用した。新字新仮名である。但し、加工データとして、所持する筑摩書房『ちくま文芸文庫』の「奇談異聞辞典」(底本を解題したもの・二〇〇八年刊)を加工データとして使用させて貰った。ここに御礼申し上げる。
読みが振れる、若い読者が躓くかも知れぬ箇所には《 》で読みを添えた。引用文の場合は歴史的仮名遣を用いた。なお、( )は柴田自身が附したルビである。
また、柴田のストイックな編集法を鑑み、私の注は、どうしても必要と判断したもののみとした。幸い、有意な部分は私が既に電子化注したものがあるので、それをリンクさせてもいる。但し、この原本は新字新仮名であるため、私が電子化していない引用文の原本に当たることが出来たものは、極力、視認出来るように、国立国会図書館デジタルコレクションや他のデータベースの当該部をリンクさせるように努めた。
なお、辞典形式であるので、各項目を各個に電子化する。公開は基本、相互の項目に連関性がないものが多いので、一回一項或いは数項程度とする。]
に
肉芝【にくし】 〔嘉良喜随筆巻一〕延宝五年八月廿五日ノ夜、霊山権阿弥《りやうぜんごんあみ》ガ庭ニ丸ク白クシテ大ナル菌《きのこ》出ヅ。二三日ノ間ニ成リテ、白犬《しろいぬ》ノ蹲踞《そんきよ》ノ体《てい》に似タリ。タヽケバコンコント云フ。肉芝ノ類《るゐ》トミユ。
[やぶちゃん注::「嘉良喜随筆」は前項「南都の怪」で既出。国立国会図書館デジタルコレクションの『日本隨筆大成』巻十一(昭和三(一九二八)年日本随筆大成刊行会刊)のこちらで(左ページ四行目から)視認出来る。
「延宝五年八月廿五日」グレゴリオ暦一六七七年九月二十一日。
「霊山権阿弥」これは、現在の時宗霊山正法寺(りょうぜんしょうぼうじ:グーグル・マップ・データ)の旧塔頭の東光寺(権阿弥:この寺の塔頭にはそれぞれ「阿弥号」があった)を指す(東光寺は現存しない)。幕末、ここは本願寺の住職の別荘「翠紅館」となった。京都が一望出来る。京都観光オフィシャルサイト「京都観光Navi」の「翠紅館跡」に地図がある。
「肉芝」菌界担子菌門ハラタケ綱タマチョレイタケ目マンネンタケ科 Ganodermataceae に属するキノコ。薬用として知られたマンネンタケ属レイシ(霊芝)Ganoderma lucidum が含まれる。]
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